矢吹可奈
『自分が電話ボックスになった戸惑いと、女の子と話せる嬉しさ、』
矢吹可奈
『気持ちが整理できないまま、きつねは女の子の話を聞きます。』
木下ひなた
母さん、あのね……。
矢吹可奈
はいはい、おばあちゃんと一緒に駅に行ったんでしょう?
木下ひなた
ううん、違うべ。
矢吹可奈
あぁ、わかったわ。アイスクリームを食べたのね。美味しかった?
矢吹可奈
それより母さん、坊やと一緒に木の実のお団子を食べたいなぁ。
矢吹可奈
『きつねは、女の子と話せるのが よほど嬉しいのか、』
矢吹可奈
『自分がきつねだということを忘れて、女の子に返事します。』
木下ひなた
あははっ、違うよぉ。
矢吹可奈
『きつねのお茶目な返事に、女の子は笑い出しました。』
木下ひなた
あのね、母さん。もうすぐあたし達、
木下ひなた
母さんのいる町に引っ越すんだよ。
木下ひなた
だから、もう電話しなくてもいいんだ。
木下ひなた
だって、毎日母さんに会えるんだもん!あぁ、早く会いたいわぁ。
矢吹可奈
………えっ?
矢吹可奈
『きつねは、不意に頭がくらくらしました。』
矢吹可奈
『もう、女の子に会えなくなるではありませんか。』
矢吹可奈
『しかし きつねは気持ちを落ち着かせ、』
矢吹可奈
(この子は、私をお母さんだと思って話かけている…だから……、)
矢吹可奈
(本当のお母さん。今だけ、私がお母さんであることを許してください。)
矢吹可奈
本当なの!?お母さんも早く坊やと会いたいわ!
木下ひなた
えへへ、楽しみだよぉ。
矢吹可奈
母さんも楽しみだわ。……さぁ、今日はここまでね。おばあちゃんも心配してるでしょうし。
木下ひなた
うん!母さん、またね。
木下ひなた
母さん、
木下ひなた
母さん、大好きだよ!
矢吹可奈
うん……母さんも……坊やが……
矢吹可奈
うん……母さんも……坊やが……大好きだよ!
矢吹可奈
『きつねは、子ぎつねが亡くなる時に言えなかった言葉を、女の子に伝えました。』
矢吹可奈
『気が付くと、きつねは涙を流していました。』
矢吹可奈
『しかし その涙は、悲しみではなく、暖かい涙でした。』
木下ひなた
あれ?雨が降ってないのに、上から水が落ちてくるよぉ。
矢吹可奈
『その6へ続く』
(台詞数: 34)