矢吹可奈
『きつねは子を失った悲しみで、毎日泣きました。』
矢吹可奈
『泣いて、泣いて、涙で身体がとけてしないそうなほど泣きました。』
矢吹可奈
『泣き疲れると、じっと黙ったまま動きませんでした。』
矢吹可奈
『何日かしたある夕暮れ、きつねはやっと顔を上げました。』
矢吹可奈
『すると、遠くに電話ボックスの明かりが、ちらちらと揺れて見えたのです。』
矢吹可奈
『きつねは明かりに向かって、力なく歩きだしました。』
矢吹可奈
…………
矢吹可奈
『ぽつんとした小さな明かりは、ほんの少しきつねの胸を暖めました。』
矢吹可奈
『電話ボックスに近づくと、ふいに電話ボックスのドアが揺れました。』
木下ひなた
母さん!
矢吹可奈
『静かな夜の道に、一際はずんだ声がこだましました。』
矢吹可奈
まぁ、可愛い。私の坊やも、人間だったらこれくらいかしら。
矢吹可奈
きつねは目を細めると、今は亡き子ぎつねの事を思い出しました。
木下ひなた
んじゃぁ母さん、また明日ねぇ。
矢吹可奈
『元気な女の子は、電話ボックスから出ると、とんとん跳ねるように何処かへ行ってしまいました』
矢吹可奈
えっ…!?
矢吹可奈
『立ち去る女の子の姿に、きつねはハッとしました。』
矢吹可奈
『女の子の後ろで、きつねに似た尻尾がゆらんと揺れた気がしたのです。』
矢吹可奈
……今のは?
矢吹可奈
『その3に続く』
(台詞数: 20)