矢吹可奈
「これが邪魔の木……ですか?思ったより普通な感じの木ですね」
北上麗花
「あー、そっか……カナちゃんは魔力が無いから、何も影響がないんですね」
矢吹可奈
「え?」
北上麗花
「この木はマナを遠ざける性質があるので、私みたいな術士は特になんですけど…」
北上麗花
「近付くと魔法の力が封じられて、本来の力を発揮できなくなるんですよ」
矢吹可奈
「へぇ~、そうなんですか」
北上麗花
「はい。そういうわけで、木材集め手伝ってください」
矢吹可奈
「えっと、この木を切るんですか?」
北上麗花
「あ、立ってる木は切っちゃダメですよ」
矢吹可奈
「へ?」
北上麗花
「自然に落ちてる枝や、倒れている木を集めて来てください」
北上麗花
「邪魔の木はこの森にしか生えていない貴重なものなので、切るのはご法度なんです」
矢吹可奈
「なるほど~、わかりました」
北上麗花
「昔は魔界のいろんな所に群生していたらしいんですけど…」
北上麗花
「マナを遠ざける性質のせいで、乱獲されたり、文字通り“邪魔だ”って焼き払われたりで…」
北上麗花
「どんどん群生地が無くなっていったそうです」
矢吹可奈
「………なんだか、切ないですね…」
北上麗花
「それで、昔の魔王さんが『指定保護植物』として、切ったり焼いたりするのを禁止したんです」
北上麗花
「と言っても、その時には既に群生地はここしか残っていなかったみたいですけど」
矢吹可奈
「やさしい魔王さんだったんですね」(シミジミ)
北上麗花
「いえ、邪魔の木から作られる邪魔煙が戦略的に利用価値の高いシロモノですから」
北上麗花
「地上の人間と戦うために必要になるっていうのが理由だったみたいですよ」
矢吹可奈
「やさしさとは真逆の理由だった…」(ガーン)
矢吹可奈
「………えっと、とにかく私は落ちてる枝や倒木を集めてくれば良いんですね」
北上麗花
「はい、お願いしますね。私はココでジャミングボールを作る準備をしてますから━━━━━━」
北上麗花
━━━━━━
北上麗花
「はーい、できました~♪出来立てほやほやジャミングボール~♪」(テケテテーン)
矢吹可奈
「おぉ~!」(パチパチパチ…)
北上麗花
「はい、手伝ってくれたお礼にこれはカナちゃんに差し上げますね。それと…」
矢吹可奈
「え…?」
北上麗花
「近所の魔物さん達に話を聞いてみたんですけど、昨日シホちゃんの実家から…」
北上麗花
「5人くらいの天使さんが北に向かって飛び立って行ったのが目撃されたみたいです」
矢吹可奈
「っ…!」
北上麗花
「北ってことは地上に向かったわけではなさそうなので、たぶんまだ魔界に居ると思いますよ」
矢吹可奈
「ありがとうございます!北ですね!」(タタタ…)
北上麗花
「あ…」
矢吹可奈
(ピタ…クル)「……………あの~、北ってドッチでしょうか…?」
北上麗花
「アハハ、北はアッチだよ。でも、行く前にもう一つ…」
矢吹可奈
「…?」
北上麗花
「もし、天使さんと戦いになったら、迷わずそのジャミングボールを使ってください」
矢吹可奈
「コレですか?使うって、どうやれば…?」
北上麗花
「足元に投げつけてやればOKです。そこから煙が一気に広がるので…」
北上麗花
「その中に居る限りは誰も魔法を使えませんから、鬼さんにとっては独壇場だと思いますよ♪」
矢吹可奈
「おぉ!そうなんですね!」
北上麗花
「私からは以上です。がんばってくださいね~」
矢吹可奈
「はい!いろいろ、ありがとうございました!」(タタタ…)
北上麗花
「………」(目撃された天使さん達は“誰も抱えていなかった”らしいけど…)
北上麗花
(つまり、部屋が荒らされていたのは“シホちゃんの弟さんを探すため”…?)
北上麗花
(ということは、天使さんより先に弟さんを連れ出した者が居る……いったい誰が…)
北上麗花
「………ま、後はカナちゃんが自分でなんとかできるかな。私は作業作業~♪」
(台詞数: 50)