ジュリア
「……あたしとライブバトル?」
矢吹可奈
「はい」
ジュリア
そう言ってカナはまっすぐな視線を向けてきた。
ジュリア
「あたしは構わないけどさ」
ジュリア
そう、関係ない。
ジュリア
相手が誰だろうと、あたしは過去最高のあたしでブチ抜くだけだ。
ジュリア
心配なのはカナのほう。
ジュリア
カナのことはよく知らないけど、こう見えて結構繊細なヤツらしい。
ジュリア
バックダンサーを任された時には色々あったと聞いてる。
ジュリア
しかし今のカナに迷いは見えない。
ジュリア
あれだけヘコんで、一度は折れて。
ジュリア
それでもカナを立ち上がらせたものは何だ?
ジュリア
「なあ、ライブバトルってのは勝敗がつく」
ジュリア
「カナが歌好きなのは知ってる。気持ちだけなら互角かもしれない。けどよ……」
矢吹可奈
「勝ちます!」
ジュリア
いつかチハが言ったっけ。
ジュリア
歌の新たな表情を矢吹さんが見せてくれた、って。
ジュリア
意外だったよ。あれだけ歌に真剣なチハが──
ジュリア
まるで初めて救われたみたいに、無垢に笑ってみせたんだ。
ジュリア
「……勝つ勝たないの話じゃない。勝てるのかって訊いてるんだ」
矢吹可奈
「勝ちますっ!!」
ジュリア
「理屈の分からないヤツだな」
ジュリア
違う。これは理屈なんかじゃない。
矢吹可奈
「ジュリアさんは凄いです。自作の曲とか、弾き語りとか」
矢吹可奈
「ギターがあれば無敵だし、どんな歌でも歌えるし、カッコいいし」
矢吹可奈
「だから超えなきゃいけないって思いました」
ジュリア
チハ。
ジュリア
これだろ、あんたが言いたかったのは。
ジュリア
おまじないの効能は元気だけじゃない。
ジュリア
儚き故の強さでも、強固さ故の温かさでもなく。
ジュリア
それら全てを螺旋に変え、アカシャを翔ける光の渦さ。
ジュリア
それは玲瓏たる夏の青空のように。凛とした冬の朝霧のように。
ジュリア
……ははっ、言葉が過ぎたか。
ジュリア
「負けちゃいられないね」
矢吹可奈
「えっ?」
ジュリア
「聞かせてみな、あんたの歌を」
ジュリア
カナはカナ。それだけだろ?
(台詞数: 37)