矢吹可奈
レッスン終わり、夕暮れの帰り道
矢吹可奈
隣にいる可奈は、しょんぼりしながらとぼとぼ歩いていた。
矢吹可奈
「全然上手く〜ならないな〜い…レッスンくたくた疲れたな〜…♪」
矢吹可奈
汗でペッタリとした前髪が、余計に可奈のしょんぼり具合をわかりやすくしている気がした。
矢吹可奈
「プロデューサーさん、今更ですけど、一緒に帰ってもらってよかったんですか…?」
矢吹可奈
「だって、お仕事も残ってるかもしれませんし…」
矢吹可奈
大丈夫。これも仕事のうちだ。アイドルが元気がないなら、元気つけるのが僕の仕事。
矢吹可奈
「ならいいんですけど、今の私と一緒でもあんまり楽しくないかなって…」
矢吹可奈
「レッスンもあんまり上手くいってないし、失敗ばっかりだし、褒められることってないし…」
矢吹可奈
なんだ、そんなことか。
矢吹可奈
「そんなことって、だって、上手くいってないんですよ?周りの人にも迷惑かけてますし…」
矢吹可奈
迷惑をかけるのは、悪いこと?
矢吹可奈
「…迷惑かけたら、みんな困りますし、もっとがんばらなくっちゃ」
矢吹可奈
でも、失敗はしちゃうと思う。
矢吹可奈
「…失敗は、迷惑じゃないんですか?」
矢吹可奈
確かに、迷惑をかけないこと、失敗しないことができればそれが一番かもしれない。
矢吹可奈
でも、生きてれば絶対失敗はするし迷惑をかけることはたくさんあると思う。
矢吹可奈
大人になっても失敗することも、迷惑かけることもたくさんあるし
矢吹可奈
「プロデューサーさんもですか?」
矢吹可奈
うん。この間も音無さんに事務処理のことで怒られたし、朋花にはいつもキツイこと言われてるし
矢吹可奈
「…一緒、なのかな」
矢吹可奈
……大人になったらさ。なんでも1人で出来るようになれると思ってた
矢吹可奈
「……」
矢吹可奈
でも、出来なかった。むしろ出来ないことだらけで、悔しい思いとか、泣きたいときもたくさん。
矢吹可奈
投げ出して、逃げ出したりしたら楽なんだろうなぁって。
矢吹可奈
「…ちょっとだけ、わかるかも」
矢吹可奈
……でも、やっぱりそれは嫌なんだよね
矢吹可奈
「どうしてですか?」
矢吹可奈
…多分、可奈たちに会っちゃったからかなぁ。
矢吹可奈
可奈やみんなことが好きになっちゃって、一緒に泣いて、笑って。
矢吹可奈
僕が頑張れば、きっと誰かが笑顔になってくれるって思えるようになって
矢吹可奈
そしたら、いつの間にか夢ができて。そのためだったら無理も無茶もできるようになった。
矢吹可奈
ぶつかる壁は多いけど、みんなと一緒に一歩ずつ進んでいければ。
矢吹可奈
最後に笑えれば。そう思えば勇気が湧いてくるんだ。
矢吹可奈
可奈も、好きなことしてる時は幸せだろ?
矢吹可奈
「……はい。おやつを食べ出る時、みんなで一緒のステージに立ってる時、それに、歌ってる時!」
矢吹可奈
「……今のこんな気持ちも、吹き飛んじゃうんです!」
矢吹可奈
「そっか、そうですよね!最後にみんなで笑えたら、途中でくじけたって怖くないです!」
矢吹可奈
「夢だから、諦めたくないです!」
矢吹可奈
「歌うこと、大好きですから!」
矢吹可奈
「……はー、なんだかスッキリしました!」
矢吹可奈
「やっぱり可奈は〜歌うの大好き〜ニコニコ笑顔でレッツシンギン〜♪」
矢吹可奈
「…私、また失敗するかもしれません」
矢吹可奈
「その時は、またこうやって一緒に帰ってくれますか?」
矢吹可奈
「プロデューサーさんと一緒なら、またこうやって笑えるような気がします……えへ」
(台詞数: 45)