永吉昴
オレが物覚えついた頃には、両親がいなかった。
永吉昴
どちらも亡くなっちゃったのか、単に見捨てたのか、そういうのは今はどうでもいいか。
永吉昴
いつもボロボロの服を着て、あちこちでパンを恵んでもらい、夜はそこら辺の家の戸口で寝る毎日。
永吉昴
可哀そう?いやいや、別に不自由でもなんでもないし、こっちの方が気楽だったよ。
永吉昴
それに なんてったって、オレには生まれてから持っていた特技があった。
永吉昴
「こんにちは、チヅル姉さん」
二階堂千鶴
「あらスバル、こんにちは」
永吉昴
「今日も、いつものやってもいいかな?」
二階堂千鶴
「えぇどうぞ。あなたがいてくれると、売り上げが上がりますから」
永吉昴
「やった!今日もお店のために、がんばる!」
永吉昴
毎日 野菜売りのチヅルさんの所へ行き、
永吉昴
「道行くお兄さん、お姉さん、ちょいと足を止めて見てってよ!」
永吉昴
そう言って、オレはお店の商品である野菜を何個かあて投げて、お手玉のようにまわす。
永吉昴
レモン・オレンジ・リンゴ。かぼちゃだって簡単に回すことができた。
永吉昴
……後々わかったんだけど、こういうのってジャグリングって言うんだな。
二階堂千鶴
女性「まぁこの子ったら、器用に野菜を扱うわね」
永吉昴
とにかく、これを店の前でやると、町の人が足を止めて見てくれた。
永吉昴
ジャグリングが成功する度、みんなが笑顔になり拍手をくれる。
永吉昴
その瞬間がたまらなく好きだった!
永吉昴
男性「いや~、いいモノを見させてもらった!お姉さん、野菜を買うよ!」
二階堂千鶴
「はい、ありがとうございます!」
永吉昴
ジャグリングが終わると、足を止めてくれた人はチヅルさんの店で買い物をしてくれた。
二階堂千鶴
「お疲れ様スバル、今日もお見事でした」
二階堂千鶴
「……それで、今日もお駄賃はいりませんの?」
永吉昴
「あぁ。オレがお金持ってても、悪いヤツに盗られちゃうからな」
永吉昴
「いつものように、チヅルさんの野菜スープを食べさせてくれよ。」
永吉昴
オレがジャグリングをして成功したら、チヅルさんはお店の売り上げが上がり、
永吉昴
そしてその報酬に、チヅルさんの野菜スープをご馳走してくれる。いい関係を築いていたんだ。
二階堂千鶴
『シーン3に続く』
(台詞数: 29)