馬場このみ
平日の朝の街って、どこか沈鬱な雰囲気よね。
馬場このみ
これだけ人で溢れていても、みーんな同じような表情してる。
馬場このみ
何か嫌な事でもあったのかしら? 辛気臭い顔してたら数少ない幸せも逃げてくのにね。
百瀬莉緒
察してあげなさいな。誰もが天職に就いてる訳じゃないんだから。
馬場このみ
そうだ。莉緒ちゃん、こんな話知ってる?
百瀬莉緒
うん?
馬場このみ
世界は生者と死者が入り交じってるんだって。
百瀬莉緒
死者?
馬場このみ
そう。
百瀬莉緒
幽霊?
馬場このみ
違うわ。死んでるけど生きてるの。
百瀬莉緒
生きてたら死者じゃないわ。
馬場このみ
彼らみたいな不幸っぽい人は、神様から新しい人生を貰う為の試験中らしいわ。
百瀬莉緒
こら、指をささないの。
百瀬莉緒
えっと、新しい人生ってあれかしら? 輪廻転生。
馬場このみ
そう。あ、でも微妙に違ってね。
百瀬莉緒
……?
馬場このみ
そうねぇ。私たちが呼ぶ生や死は、実は同じものでしたーみたいな。
百瀬莉緒
同じ? 人は生を失ったら死ぬでしょ?
馬場このみ
ええ、死ぬわね。
百瀬莉緒
違うじゃない。
馬場このみ
上手く言えないけど概念の問題よ。
馬場このみ
この話の中で私たちが認知してる死は、あくまで生の延長。
馬場このみ
よくさ、この世とかあの世っていうじゃない?
馬場このみ
輪廻転生は死んだらあの世に行って何度もこの世に生を受ける、だったわよね?
馬場このみ
この話だと、死なずに生きてあの世に成るの。
百瀬莉緒
成る?
馬場このみ
そう、人は変わらないの。変わるのは世界の方。
馬場このみ
で、以前と同じように生き続けるらしいの。この世という名のあの世でね。
馬場このみ
それが死者。死者は生者を常に疎ましく思ってるらしいわ。
百瀬莉緒
そ。なら、私は生者ね。
馬場このみ
良かったじゃない!
百瀬莉緒
姉さんは?
馬場このみ
もちろん私も生者よ。毎日が楽しくて仕方がないもの。
百瀬莉緒
あら? でも、そうなると死は存在しないってことになるのかしら?
馬場このみ
ううん。やっぱり死はあるのよ。
馬場このみ
本当の死っていうのは停止らしいわ。
馬場このみ
生者にも、死者にも、幸福にも、不幸にも成れないまま世界から置いてかれるんだって。
百瀬莉緒
その後はどうなるの?
馬場このみ
さあ? 考えたくもないわねぇ。
百瀬莉緒
……。
馬場このみ
……。
馬場このみ
ま、幸も不幸も神様の御機嫌次第ってことよ。
百瀬莉緒
要約が雑過ぎない?
馬場このみ
今、私たちは生きている! それだけでいいんじゃないかしら。
百瀬莉緒
それは……どうなの?
馬場このみ
彼みたいに、今にも死にかけた顔してフラついてなきゃ万事オッケーよ。
百瀬莉緒
だから指をささないで……って、あら? プロデューサーくんじゃないの。
馬場このみ
大丈夫よ、プロデューサー。見て呉れはアレだけどあなたも生者に違いないわ。
百瀬莉緒
そうね。こんな美人に囲まれて死者である筈がないわよね!
(台詞数: 50)