馬場このみ
『誕生日に元カレからメールが来た』
馬場このみ
どうしよ・・・
馬場このみ
『返事を出しそびれたまま数日が過ぎてしまって私は一人部屋で途方に暮れる』
馬場このみ
返した方が、いいわよね・・・
馬場このみ
『そうは思うもののなんと返したらいいかなんてさっぱり思いつかない』
馬場このみ
『ならいっそ電話してしまうか。メールだと下手に形に残っちゃうから逆に気楽かも』
馬場このみ
『メールの感謝と適当に二言三言話をしてそれで切っちゃえばいい』
馬場このみ
『うん、それがいい。そうしよう。それっきゃない!!』
馬場このみ
『私は携帯の電話帳からあいつの番号を引っ張り出して発信ボタンを押した』
馬場このみ
『数回目のコールで相手が電話に出た』
馬場このみ
「もしもし?」
馬場このみ
『ああ、あいつの声だ・・・。大好きだった人』
馬場このみ
『家族になれたかもしれない人・・・』
馬場このみ
もしもし?・・・うん、私。・・・久しぶり
馬場このみ
あのね、メール。ありがとう。・・・嬉しかった
馬場このみ
『そこまで言って会話が途切れる。正直、今頭の中真っ白だ・・・』
馬場このみ
連絡先、変えてなかったのね・・・
馬場このみ
私?私はなんとなくよ。変えると面倒だし、知り合い減ったりしたら嫌だし・・・
馬場このみ
『嘘つけ。本当は変えたくなかっただけのくせに。変えるのが、怖かったんだ』
馬場このみ
そう、ライブ見てくれたんだ。ありがとう。笑顔が綺麗だったって、バカ。変なこと言うな
馬場このみ
『ああ、声を聞いて思い出す。私こいつのことが大好きだった』
馬場このみ
『この人の子どもを産みたい。素直にそう思ってた』
馬場このみ
『でも、今私たちは別々の人生を歩いてる』
馬場このみ
『理由は簡単。私がアイドルになると言い出したから』
馬場このみ
『あの時初めて大喧嘩した。それで私達の時間は終わった』
馬場このみ
「なんでアイドルなんてやるんだ。おまえは俺の嫁さんやってればそれでいいじゃないか!!」
馬場このみ
『今思い出せば彼の愛情溢れるその言葉が、あの時の私には絶望だった』
馬場このみ
『私はね、貴方の隣にいると本当はいつも不安だったの』
馬場このみ
『与えてくれる愛情に私は返せるものが何もない気がして』
馬場このみ
『でも貴方がいたから、その劣等感と向き合える勇気が持てた』
馬場このみ
『だからアイドルになろうと思ったんだ。貴方に恥ずかしくない笑顔を渡せるようになりたくて』
馬場このみ
『あの時は冷静になれなかった。貴方の言葉を受け入れられるほど強くなかった、でも今なら』
馬場このみ
ねぇ、今・・・。彼女、いるの?
馬場このみ
『知らぬ間に、ぽつりと聞いていた。後悔する前に、答えが返って来た』
馬場このみ
・・・へぇ。そうなんだ。ま、6月だもんね
馬場このみ
で、お嫁さんはどんな人?
馬場このみ
私とは正反対でセクシーで魅力的な人?あんたねぇ、ぶっとばすわよ?!
馬場このみ
ところで式の招待状が来てないんだけど、どういうことかしら?
馬場このみ
嘘よ。ジョーダン、ジョーダン。私も仕事で多分行けないだろうし
馬場このみ
べ、別に平気よ!私を誰だと思ってるの?200万人ライブを成し遂げた女よ!!
馬場このみ
ビビりませんでしたー!!本番前もオトナの余裕で他の子のフォローに回ってたんだから
馬場このみ
『また嘘をついた。震えてたくせに。不安で、手を握っていて欲しかったくせに・・・』
馬場このみ
・・・へ
馬場このみ
あんたねぇ。『俺浮気しないから』って、それ言う相手が違うんじゃない?
馬場このみ
・・・ありがとう。それと、おめでとう。お幸せに
馬場このみ
『電話を切って不思議とショックを受けていない自分に気づいた』
馬場このみ
『浮気しないから。その一言で、何だかあいつの気持ちが全部分かった。分かってしまった』
馬場このみ
『一人だけの部屋で、私はさよならとつぶやく。電話で言いそびれた言葉』
馬場このみ
『そして私は部屋にずっと置きっぱなしになっていた写真立てを静かに伏せた』
馬場このみ
～おしまい～
(台詞数: 50)