大神環
「くふふぅ~♪」
大神環
頭にタオルを乗っけて、ばあちゃんの言ってたとおりお風呂に肩までしっかりと浸かる。
大神環
今日一日、レッスンやたんけんで沢山動いた体から、何かが溶け出してくるような気持ちになる。
大神環
きっと、これがこのみやりおが言っていた『一日の疲れ』ってやつだぞ!くふふ。
大神環
ことはやなおが、お風呂が好きって言うのがよく分かる。たまきもお風呂は好き。
大神環
ただ、じっと浸かってるのはちょっと我慢できなくて。
大神環
気がついたらお風呂の中を色々動いたり、お湯を水鉄砲で飛ばしてみたりしていた。
大神環
にじにじ。うごうご。色々動いてみて、何となく体育座りにしてみる。
大神環
入ったときよりもお湯が少なくなったせいで、水面から膝が出てきた。
大神環
膝のてっぺんには、今日のたんけんで付いた傷。もう、かさぶたが出来てる。
大神環
このかさぶたは、たまきが元気に遊んだ証だってばあちゃんは言った。だから、たまきの宝物。
大神環
泥んこで、小さな傷を付けて事務所に帰ると、おやぶんもことりも笑いながら迎えてくれる。
大神環
…りつこやいおりは『早く着替えなさい』『アイドルなんだから気をつけなさい』って怒るけど。
大神環
お風呂に浸かっているせいか、ちょっとぼんやりしながらかさぶたをツンツンつつく。固い。
大神環
…そういえば、ことはやかれんお姉ちゃんにかさぶたがあるところを見たことが無い。
大神環
…つんつん。つんつん。
大神環
このかさぶたを剥いだら、もしかしたらちょっとだけ大人になれるのかな?
大神環
ばあちゃんは『かさぶたは剥いじゃダメ』って言ってたけど。
大神環
膝小僧にあるかさぶたをじっと見る。じー。
大神環
…ちょっとだけ、ちょっとだけなら剥いでもいい…かな?
大神環
おっきくなった好奇心は止められない。爪を使ってひっかくように、少しずつ剥いでみる。
大神環
ちょっとずつ剥いでみて、半分くらい剥がれた。このままゆっくりと剥いでみたら…。
大神環
ちょっとずつ剥いでみて、半分くらい剥がれた。このままゆっくりと剥いでみたら…っ!!
大神環
膝にぴりっとした痛み。ビックリして指が跳ねて、爪に引っかかったかさぶたが全部剥げた。
大神環
かさぶたの無くなったら膝から、真っ赤な血が滲んできた。あわてて蛇口から水を流してあてる。
大神環
流れた血が、お風呂に溶けて消えた。かさぶたが無くなった傷にお湯がしみて痛い。
大神環
『かさぶたの下で怪我が治ってるんだから剥がしちゃいけないよ』
大神環
ばあちゃんの言うとおりだった。かさぶたを剥いでも、大人にはなれっこない。
大神環
ことはやかれんお姉ちゃんみたいな、お姉ちゃんになるための答えは無かった。
大神環
…………。
大神環
だったら、たまきはこのままでいいや♪小さな傷を沢山作って、おやぶん達と沢山遊んで。
大神環
無理に背伸びをして大人にならなくても、たんけんよりも楽しいことが見つかるまでこのまま。
大神環
そうと決めたら、まずはお風呂から出よう。お風呂から出て、沢山ご飯を食べて。
大神環
明日からの楽しいことにワクワクしながら、沢山眠っちゃおう。
大神環
たまきは、かさぶただらけの熱い気持ちを忘れないようにすればいいんだから。くふふっ♪
(台詞数: 35)