\Romantic!/
BGM
Eternal Harmony
脚本家
sikimi
投稿日時
2017-08-06 16:00:35

脚本家コメント
\Now!/
とある楽曲から思いついたドラマ。元の曲は知らなくても楽しめるようになってます。楽しいドラマかはともかく。

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豊川風花
占いという物は、得てして当たるようなものではない。ましてや信用できるものではない。
豊川風花
いつも以上にご機嫌ナナメな私の髪と格闘しながら着流していた朝のニュース。
豊川風花
その中の一コーナーで、キャスターさんが朝の占いを読み上げていた。
豊川風花
『今日の一位は乙女座のあなた!センチメンタリズムな運命を感じちゃう、スペシャルな一日!!』
豊川風花
スペシャルな一日になるんだったら、もうちょっと毛先が私の理想通りになっててほしいんだけど。
豊川風花
鏡に映る私の、なかなか言うことを聞いてくれない毛先をにらみつけながら独りごちる。
豊川風花
あんまり切羽詰まってるわけじゃないけど、長々と格闘をし続ける暇はないんだから…。
豊川風花
……。
豊川風花
「今日は、一番お気に入りの服にしてみようかしら…?」
豊川風花
…ついさっき、占いは信じられないと考えてた人の発想じゃないわよね。ちょろいなぁ、私…。
豊川風花
自分で自分にツッコミを入れながら、それでも身支度をする手を止めることはない私だった。
豊川風花
――――――――――。
豊川風花
「もうっ!占いなんて金輪際信じないからねっ!!」
豊川風花
ぷりぷりと怒りながら、劇場の扉を開ける。
豊川風花
家を出て少し歩いたところで携帯電話を忘れたことに気づいて引き返し。
豊川風花
通勤に使う電車はいつもより込んでいて、他のお客さんといつも以上に密着することになって。
豊川風花
やっとのことで電車を降りたと思ったら改札で引っかかって、プチ渋滞を作ってしまい。
豊川風花
挙句の果てに何もない道で思いっきりすっ転んでしまい、周りの人の注目を集める始末。
豊川風花
劇場に来るまですでに踏んだり蹴ったり。これで運勢一位だなんて信じられない!
豊川風花
この分だと今日のレッスンやお仕事でこれ以上にない位悲惨なことが起こるかもしれない。
豊川風花
いつも以上に周囲に気を配って、これ以上のトラブルは発生しないようにしなきゃ。
豊川風花
一呼吸おいて気を引き締めて、事務室の扉を開ける。
豊川風花
そこには、キーボードを叩きつつ、書類の山と格闘するプロデューサーさんの姿があった。
豊川風花
「おはようございます、プロデューサーさん。今日はお早いんですね?」
豊川風花
挨拶をするとプロデューサーさんはタンッと小気味よくエンターキーを押しながら返してくれた。
豊川風花
今の動作でひと段落したのか、プロデューサーさんはこちらに体を向けた。
豊川風花
…朝ひげをそる暇がなかったのか、その顔には無精ひげが生えていた。
豊川風花
くすっと、思わず笑いが漏れる。そんな様子を訝しそうに見るプロデューサーさん。
豊川風花
「ひげを剃ってないようですけど、剃り忘れてきたとかですか?」
豊川風花
訊くと、プロデューサーさんは私が笑った理由に合点のいった様子で、困ったように頭を掻いて。
豊川風花
……朝寝坊して、身支度もロクにする間もなく慌てて家を飛び出したらしい。
豊川風花
一人納得していると、プロデューサーさんは髭を剃ってくると言って洗面室へ向かおうとしていた。
豊川風花
その頭には、寝ぐせがついていた。どうも髪を解く時間もなかったみたい。
豊川風花
「…あれ?あの寝ぐせ、どこかで見たような…?」
豊川風花
何処で見たのか、記憶をたどろうとして…すぐに思い出した。
豊川風花
「プロデューサーさん、寝ぐせがついてますから一緒に直して来たらいいですよ?」
豊川風花
「もし何なら、私が直してあげましょうか?」
豊川風花
プロデューサーさんの頭には、今朝の私と同じ所に、同じような寝ぐせがついていた。
豊川風花
『占った未来、寝癖の向き次第!?』って、朝のテレビで聞いた曲が頭をよぎる。
豊川風花
占い的には相性抜群なのかしら。
豊川風花
寝ぐせを直してあげるためにプロデューサーさんの後をついて行きながら、そんなことを思う。
豊川風花
…そういえば、プロデューサーさんは身支度する時間も惜しんで出社してたのよね。
豊川風花
「プロデューサーさん、一応確認してみますけど、今朝何か食べましたか?」
豊川風花
「やっぱり、何も食べてないんですね。確かに話聞く限り食べる暇も無かったみたいですけど…」
豊川風花
「あの、良かったら私が何か、給湯室にある材料で簡単な物を作りますよ?」
豊川風花
「今日はまだまだ始まったばかりなんですから、ちゃんとご飯食べておかないと体がもちませんよ」
豊川風花
私の提案に、プロデューサーさんは逡巡したのち、お願いしますと答えてくれた。
豊川風花
歌詞にあったように、ランチに誘ったわけじゃないけど。簡単だけど手料理を振舞う約束をして。
豊川風花
センチメンタリズムな運命もなければスペシャルな一日でもないけれど。
豊川風花
ちょっとだけ、占いを信じていいかも…なんてね。

(台詞数: 50)