追求された理想
BGM
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脚本家
不明
投稿日時
2017-05-16 23:51:49

脚本家コメント
柔らかさ。それは人をダメにする。

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豊川風花
豊川風花は悩んでいた。
豊川風花
現状、まだまだ荒削りではあるが、豊川はアイドルとして成功しているといえる。
豊川風花
豊川は他の年若いアイドルたちと違い、彼女は前職のあった身だ。
豊川風花
それを辞めてまで飛び込んだ芸能界。
豊川風花
その覚悟は計り知れない。
豊川風花
そんな豊川が持つ悩み。それは、
豊川風花
「たまには健全なお仕事がしたいな……」
豊川風花
豊川の特徴のひとつにプロポーションの良さがある。
豊川風花
スリーサイズはB93、W63、H91。
豊川風花
さらに絶妙な肉のつき加減。
豊川風花
すべてを包み込む包容力。
豊川風花
ルパン三世でなくとも飛びつきたくなるのは男の性といえよう。
豊川風花
しかし、それだけに豊川の仕事は露出の多いものが多かった。
豊川風花
水着を着て歌ったり、水着を着て踊ったり、水着を着てアイスを舐めたり、水着を着て──。
豊川風花
自身が出演した番組はきちんと確認する豊川だが、だからこそ気づいていた。
豊川風花
自分が撮られる際、必ず胸から入ることに。
豊川風花
プロポーションが豊川の武器のひとつなのだから、それは仕方がない。
豊川風花
だが、こうも胸ばかりを見られると考えてしまう。
豊川風花
自分は胸のおまけなのか、と。
豊川風花
そもそも豊川がなりたかったのは清楚なアイドルである。
豊川風花
たまには水着でもいいかもしれないが、これでは清楚とは程遠い。
豊川風花
このままでは理想からどんどん離れてしまう。
豊川風花
豊川は考えた。このままではいけない。
豊川風花
ではどうする。
豊川風花
印象付けるのだ。豊川風花は清楚系アイドルであると。
豊川風花
もちろん一朝一夕にはいかないことはよくわかっている。
豊川風花
他者のイメージというものはそう簡単には変わらない。
豊川風花
必要なのは今のイメージを覆すインパクトだ。
豊川風花
豊川は知らないが、世の男たちは初めて彼女の胸を見たとき、そのインパクトにやられたものだ。
豊川風花
インパクトとは衝撃である。
豊川風花
衝撃のある清楚。
豊川風花
なんだか難しいんだか出オチなんだかわからないが、とにかく豊川はそう結論付けた。
豊川風花
そして、その衝撃のある清楚に豊川は心当たりがあった。
豊川風花
年齢こそ豊川より下だが、事務所の先輩にひとりいたのだ。衝撃のある清楚、その体現者が。
豊川風花
イメージカラーは白。気弱で守ってあげたくなる、それでいて芯の強さは誰にも負けない。
豊川風花
そんな先輩をトレースするのだ。
豊川風花
見て盗む。
豊川風花
職人の世界には当たり前のことを豊川は実践することにした。
豊川風花
取り出したのはスコップ。さあ、穴堀の時間だ。
豊川風花
突き立てたスコップはしかし、事務所の床に阻まれた。ぶるんと胸が揺れた。
豊川風花
何度か試してみるが、胸が揺れるだけで一向に掘れる気配はない。
豊川風花
元看護師だけにガッツのある豊川だが、胸が揺れるだけの結果となった。ぶるるんぶるるん。
豊川風花
いきなりスコップは難易度が高かったようだ。初めは簡単なものにしよう。
豊川風花
そこで喋り方を変えてみることにした。
豊川風花
語尾をビミョーに伸ばすのだ。タラちゃんのように。
豊川風花
何度か繰り返すうちにそれっぽくなった。この際なので口癖も真似してみることにした。
豊川風花
「私、ひんそーでちんちくりんで──」
豊川風花
次の瞬間、豊川の視界が目まぐるしく揺れた。ぶるるんぶるるん。耳がきーんとした。
豊川風花
隣にはいつのまにか先輩のひとりが立っている。歌の上手さでは事務所随一だ。
豊川風花
その先輩の笑顔を最後に豊川の脳はシャットダウンした。彼女の記憶はここで途切れた。

(台詞数: 50)