豊川風花
P『……そういえば、あの肉球、柔らかくなかったんだな。』
豊川風花
……そんな風に、プロデューサーさんはいきなり話をし始めました。
豊川風花
泊まりがけの地方ロケ。撮影は順調に終わって、今は二人で食事中です。
豊川風花
……あ、「二人で」には深い意味はないですよ!今日はみんなとはバラバラのお仕事ってだけで……
豊川風花
プロデューサーさんから誘われてとか、私が誘ったとか……そうではなくて、なり行きで、です。
豊川風花
「それはそうですよ。クッキーなんですから、『肉球』だけ柔らかくは仕上げられませんし。」
豊川風花
お仕事のちょっとした反省会のあと、お酒のおつまみは今年のバレンタインの話題になりました。
豊川風花
今年も今年で、みんなから甘いものを貰ったそうで。一気に食べたら、体に悪そうなのに。
豊川風花
そう思って私は、多少は日保ちするかもと堅焼きのクッキーにしたのになあ……
豊川風花
「……沢山貰ったからって、お菓子ばかり食べちゃ駄目ですよ。私のは、後回しで良かったのに。」
豊川風花
P『あ、いや何て言うか……肉球が柔らかいかどうか気になって、まず食べたって言うか……』
豊川風花
……やっぱり私の想いは、プロデューサーさんに伝わってません。
豊川風花
頑張って作ったんだから、ゆっくり味わってほしかったのに。どうしようもなく疲れた日とかに。
豊川風花
……そりゃあ、真っ先に選んで食べてもらえたのは、嬉しくないと言ったら嘘になるけど。
豊川風花
……だいたいプロデューサーさんは、ズルいです。子供みたいにイタズラばっかりです。
豊川風花
夜には歌のお仕事かあるからって連れ出して、日中はずっと水着同然の衣装を着せたり。
豊川風花
今日は健康番組だから安心しろって言って、現場で体重測定させたり。デリカシー無さすぎです!
豊川風花
バレンタインの夜だって、足音忍ばせて近づいて、いきなり後ろから肩を叩いたり!
豊川風花
……プロデューサーさんは、実は『猫』みたいかもしれません。
豊川風花
私に確認もとらずに突飛な仕事を持ってきて、私をビックリさせて。
豊川風花
水着を着ているとき、休憩中に背中にペットボトル当ててきたり!イタズラしたり、からかったり!
豊川風花
そうです!さっきの「足音を忍ばせる」なんて、まさに猫ちゃんじゃないですか。
豊川風花
色々私を振り回しておいて……いきなり、頼ってきたり甘えてきたり。
豊川風花
「……フゥ。」
豊川風花
お酒をあおって、つい偶然のふりをして、溜め息をついちゃいました。
豊川風花
これからはプロデューサーさんに振り回されるばかりじゃなくて、自己主張もしていこう、
豊川風花
そういう『決意表明』も込めて、クッキー用意したのになあ。
豊川風花
イタズラが減ったら、もっと私を尊重してくれたら……いいことがありますよ、って言うために。
豊川風花
……
豊川風花
……看護師を辞めてアイドルになるとき、みんなに言ってきた以上に不安を抱えていました。
豊川風花
年齢でも不利。努力して得た資格を手放してまで、自分の憧れに熱を上げて良いのだろうか、って。
豊川風花
それでも、この世界への「最後の」一歩を踏み込ませてくれたのは……プロデューサーさん。
豊川風花
私の経歴や夢を聞いてくれて。遠回りになっても最後まで一緒に歩いていくぞって言ってくれて。
豊川風花
初めてお話ししたあの日があるから、私も私の夢を信じて、歩いているんですよ。
豊川風花
……「遠回り」ってのは、転職組って話でなく、セクシーなお仕事連発って意味だったですけど!
豊川風花
プロデューサーさんと私は二人三脚……もうちょっと対等に、主張し合える間柄にならないと……
豊川風花
P『……風花、ちょっと呑みすぎじゃないか?そろそろ宿に戻るぞ。』
豊川風花
「……は~い。」
豊川風花
今夜もまた、伝えたいことを言えないまま終わります。せめてもの抵抗で、生返事しました。
豊川風花
P『やっぱり出来上がってるな。……ほら、立てるか?』
豊川風花
プロデューサーさんの差し伸べた手を両手で握って立ったとき……
豊川風花
気づいちゃいました。私……こういう細かい優しさに触れるだけでも、嬉しくなっちゃうんだって。
豊川風花
歌の仕事のあと、凄く良かったって言ってもらったり。水着の時スッとガウンを掛けてもらったり。
豊川風花
クッキーを渡したとき、素直なありがとうを伝えてもらったり……
豊川風花
……
豊川風花
トホホ。これじゃあ私は、猫ちゃんじゃなくてワンちゃんです。
豊川風花
飼い主に……パートナーにしてもらうことが、大抵嬉しくなっちゃう。愛が有るって信じてるから。
豊川風花
……ダメダメ!従順なだけでなく、たまには猫ちゃんみたいにワガママにならないと。たまには。
豊川風花
今の関係も、嫌いじゃないですけど……プロデューサーさんとは、もっと良い関係になれる筈です。
(台詞数: 49)