とっておきのエスパーで。
BGM
オレンジの空の下
脚本家
sikimi
投稿日時
2015-11-02 21:51:25

脚本家コメント
不意に思いついた話をパッと認めておけるのがドラマシアターの良いところだと思います。ちゃんと練らなきゃ…ですが。
自分自身、なんでこんな組み合わせにしたのか謎 謎。もちろん自分だけが得をする感じ。

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豊川風花
少しだけ足取りの重い、撮影からの帰り道。
豊川風花
お仕事の出来自体は悪くなくて、むしろ自他ともに高評価だと思う。
豊川風花
それでも、劇場に帰る足が上手く進まないのは別の原因があるから。
豊川風花
それは、私が劇場を出る前のプロデューサーさんの姿。
豊川風花
書類の山に追われているらしく、疲れた顔をしていた。振られた手もどこか弱々しかった。
豊川風花
それでも、小さな子達の撮影にはちゃんと付き添いたいらしく、出かける準備もしていた。
豊川風花
あの様子だと、劇場に帰ってきたところで落ち着く暇もなく書類仕事をやらなきゃいけないだろう。
豊川風花
何か手伝えることがあればいいけど、生憎律子ちゃんやこのみさんみたいに事務仕事はできない。
豊川風花
…そんなもどかしさを抱えながらの帰り道。いつも以上にスローペースで歩いていると。
豊川風花
「そこのお姉さん、そんな沈んだ顔をしてどうしたんですか?」
豊川風花
突然、私に投げかけられた声。振り向くと、そこには女の子がいた。
豊川風花
年齢は十代半ば…亜利沙ちゃんくらいだろうか。肩までありそうな髪をポニーテールにしている。
豊川風花
人懐こそうな瞳を向けた少女は、私にこう言った。
豊川風花
「何か悩み事ですか?いえ、言わなくても大丈夫です!サイキック読心術で見抜いて見せます!」
豊川風花
…なかなか変わった子みたい。悪い子じゃないとは思うんだけど。
豊川風花
女の子は鞄から、なぜかスプーンを取り出すと、なにやら念じ始めた。
豊川風花
「むむむ~…!サイキック読心術~!!」
豊川風花
「見えました!貴女がスーツを着た男の人とケーキを食べている未来が見えます!」
豊川風花
…読心術はどこに行ったのかしら。それは未来予知よね?
豊川風花
私がそう言うと、女の子は少し慌てながら、「サイキック未来予知ですっ!」って言った。
豊川風花
「つまり、お姉さんはこれからスーツを着た男の人とケーキを食べるんですね!」
豊川風花
…それは未来予知なのか、それとも想像なのかは分からなかったけど。
豊川風花
「むむむ!お姉さん達はとても楽しそうにケーキを食べてるビジョンが見えます♪」
豊川風花
屈託のない笑顔でそんなことを言われると、私の考えた小さな疑問なんてどうでも良くなった。
豊川風花
「…ふぅ、私のサイキック未来予知は以上です。お姉さんの未来に良い事があるといいですね♪」
豊川風花
彼女と話をしていると、何だか気持ちが少し軽くなった気がする。サイキック念力…なんちゃって♪
豊川風花
その子にお礼を言うと、私は劇場までの帰り道を再び歩き始めた。
豊川風花
そう言えば、帰り道の途中に美味しいケーキ屋さんがあったはず。
豊川風花
劇場の皆にケーキを買って帰ろう。ふふふ、未来予知が的中したみたいね♪
豊川風花
でも、プロデューサーさんは、お仕事で忙しいからすぐには食べないと思う。
豊川風花
だから私は、プロデューサーさんが休憩するタイミングでケーキを出してあげよう。
豊川風花
このみさんみたいに事務仕事は出来ないし、雪歩ちゃんみたいに美味しいお茶も淹れられないけど。
豊川風花
お仕事の合間にちょっとだけリフレッシュさせてあげることは出来るはず。
豊川風花
もしかしたら、「そんなに食べるともっとむちぽよになる」なんて言われるかもしれないけど…。
豊川風花
今日くらいはそんな言葉も大目に見てあげて良いかもしれない。
豊川風花
だって、私達のためにお仕事を頑張っているんだから。
豊川風花
角を曲がると、ふわぁっとケーキ屋さん特有の甘い匂いが私の所まで届いてきた。
豊川風花
どんなケーキが好きなのだろう。そんなことを考えながらお店へ向かう足取りは。
豊川風花
まるで羽が生えたみたいに軽くなっていた。

(台詞数: 39)