玊食傷歎 一
BGM
Fate of the World
脚本家
Կիշիրա
投稿日時
2016-11-15 05:50:56

脚本家コメント
【⚠閲覧注意⚠】
一話目を書き終えてから気付きましたが、結構ショッキングな話になりそうです。読んでいる途中に少しでも不快に感じたらブラウザバック推奨です。
長くなるかもしれませんしそうでもないかもしれません。でもいつも通り普通にアイマス関係無いです。

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宮尾美也
それはどう見ても猫でした。
宮尾美也
古い上着の様な毛並みで、手足はまるで絞った布切れのようで。
宮尾美也
てっぺんの小枝に逆さまにぶら下がっている様はまるで蝙蝠のようで。
宮尾美也
見てる人の食欲を奪いそうな毛の色をして、でも瞳はよく熟れた果実のようで。
宮尾美也
とてもこの世の生き物には思えない姿をしていましたが、でも私には。
宮尾美也
どういう訳か、どう見ても猫に見えたのです。
宮尾美也
裏口にエサを求めて集まる、あの子達と全く同じように見えました。
宮尾美也
ただ、その表情だけが……
宮尾美也
あ、最初から話した方が良いですか?
宮尾美也
私が部屋を出られないようになってから、もう随分経ちました。
宮尾美也
体を悪くしてしまったようです。これはとっても珍しい事らしく、お医者さんも困っていました。
宮尾美也
私はのんびりするのが好きなので、その毎日に嫌な思いはあまりしていませんでした。でも、
宮尾美也
お父様、お母様は私をとても心配して、日に日に暗い顔になっていきました。
宮尾美也
それからお父様達は私の為に、私の体を良くする方法を探しまわっていました。
宮尾美也
二人の怒った声が二階まで届くのは少し嫌でした。
宮尾美也
でも、毎日寝る前にキスをして、手を握ってくれるようになったのは嬉しかったです。
宮尾美也
……そんなある日、お庭でお世話さんが話しているのが聞こえました。
宮尾美也
私は明るい内はいつも窓を開けて、そうして話を聞くのが好きだったのです。
宮尾美也
お世話さんの噂を聞くと、どうやら私が治るかもしれないと、その為に毎日頼みにいっていると、
宮尾美也
そんな事を話していました。毎日頼みに行って、でも中々聞いてもらえないようです。
宮尾美也
お父様も大変ですね。とお昼寝しようとした時、何か変な音と、匂いがしました。
宮尾美也
あら何かしら、と辺りを見回すと窓の外、お庭の大きな木のてっぺんに、それはありました。
宮尾美也
それがさっき言った猫です。なんだかヘンテコなのにどう見ても猫で……
宮尾美也
でもどういう訳か、こちらを見てニヤッと笑うその表情だけが……
宮尾美也
どうしても、人と同じに見えました。
宮尾美也
初めて見る景色で、とっても嬉しくなってしまって、私が窓に駆け寄ると。
宮尾美也
あろうことか、その猫は私に話しかけて来たのです。
宮尾美也
それが人の言葉だったかどうかは分かりませんし、声も思い出せません。
宮尾美也
けれど、確かにそれは私に伝わったのです。
宮尾美也
猫さんのおことばを掻い摘むとこんな感じでした。
宮尾美也
お父様が毎日頼みに通ってる相手とはなんとこの猫さんの事で。
宮尾美也
どうやら、この猫さんにはそんな力があるらしいです。詳しくは分かりませんでした。
宮尾美也
猫さん、この辺では結構な方らしくて、この家が経つ前からこの辺に住んでたそうです。
宮尾美也
でも、猫さん自分で言っちゃうくらい意地悪らしくて、お父様を追い返してたらしいです。
宮尾美也
別に意味なくですよ、その気持ち。でも私はちょっと分かっちゃいます。
宮尾美也
でもお父様ったらあきらめずに頼むから、どんな子か気になって家までいらしたそうです。
宮尾美也
こんな子です〜。と挨拶するととても気に入ったのかケラケラ笑ってくれました。
宮尾美也
その絵本の三日月みたいな口のまま、猫さんは面白くて堪らなさそうに尋ねてきました。
宮尾美也
どんな質問でしたっけ?それは忘れてしまいましたが、どう答えたかは覚えています。
宮尾美也
考えたこと無いです〜。って、そう返しました。
宮尾美也
それを聞いた猫さんはさらに笑いだして、もうお腹が破れちゃうんじゃないかってくらい。
宮尾美也
さっきまでぶら下がってた枝の上を器用に笑い転げ回って、そしてそのまま木の幹を転がって……
宮尾美也
そのまま帰ってしまいました。結局、行きも帰りも挨拶はありませんでした。
宮尾美也
そして、その日の特別はそれだけじゃなかったんです。
宮尾美也
なんと、その晩は久しぶりに家族揃って食事が出来ました。料理もとっても美味しくて。
宮尾美也
私だけ特別に食べさせてもらったお肉なんて、食べた事無いってくらい絶品で!
宮尾美也
おやすみの時は、お父様もお母様も、皆で私の手を握ってくれて、眠るまで側にいてくれるって。
宮尾美也
なんて幸せなんだろうって思いながら。明日からもこんな日になればいいなって思いながら。
宮尾美也
幸せに、眠りにおちていきました。

(台詞数: 49)