宮尾美也
む〜……
百瀬莉緒
……また街中で美也ちゃんが凍りついてるわね。今日も今日とて、何してるんだか。
百瀬莉緒
日が暮れるまであの姿勢のままになりかねないし、ちょっと声だけでもかけておきますか。
宮尾美也
あ、莉緒さんこんにちは〜。今日もいいお日柄ですね〜。お布団を干すのにいいですよ〜。
百瀬莉緒
あ、おはよう美也ちゃん。……なんで私が近づいたのが分かったのかしら。呼びかける前なのに。
宮尾美也
伸びてきた影が、莉緒さんの髪型でしたから〜。足音もいつものハイヒールのでしたし。
百瀬莉緒
美也ちゃんが目が良いってのは、単なる噂だけじゃなかったのね。
百瀬莉緒
で、うつむいて何見てたの?お姉さんにも見せてほしいわ。
宮尾美也
それでは、特等席をお譲りしますね。実は、この子を見てたんですよ〜。
百瀬莉緒
どれどれ?
百瀬莉緒
どれどれ?……ってアオムシ!?私、虫嫌いなのよ。
宮尾美也
そんなにお嫌いですか〜?ムニムニしてそうで、可愛いのに。
百瀬莉緒
どうせなら、蝶々になってから見たいものよね。この子もアゲハ蝶になるのかしら。
宮尾美也
いいえ〜。この子はたぶんモンシロチョウですよ。アゲハ蝶は、ミカンとかの葉しか食べません。
百瀬莉緒
……ああ、さいですか。
宮尾美也
ところで莉緒さん。ちょうちょのサナギって、中がどうなってるかご存知ですか〜?
百瀬莉緒
私、虫は嫌いなんだって。このアオムシから蝶の脚やハネが出てるの、想像したくないわよ。
宮尾美也
残念、不正解です〜。
宮尾美也
サナギの中でちょうちょは、一度体が全部ドロドロになるんです〜。スープみたいに。
宮尾美也
それから、少しずつちょうちょの体が出来ていって、羽ばたく日を迎えるんですよ〜。
百瀬莉緒
……サナギの中がドロドロなんて、ますます知りたくなかったわよ。
百瀬莉緒
……でも不思議ね。アオムシは一旦、姿形が無くなっちゃうようなものでしょ?
百瀬莉緒
それでよく、自分が蝶々だって分かるものね。アオムシから蝶々になるとき、記憶も残るのかしら?
宮尾美也
うーん、それはちょうちょに聞いてもらわないと分からないですね〜。
宮尾美也
……でも、アオムシの頃の事も覚えててほしいですね〜。今日みたいな晴れの日のこととか。
百瀬莉緒
ふふっ。美也ちゃんらしい発想ね。
宮尾美也
だって、恋を知ったからって、恋以外のことを忘れちゃわなくてもいいですからね〜。
百瀬莉緒
って美也ちゃん、結構ダイタンなこと言うわねー。
百瀬莉緒
って美也ちゃん、結構ダイタンなこと言うわねー。……って、美也ちゃんの歌の話ね。
宮尾美也
女の子が恋を知ると、今までとは違う「自分」にはなっちゃうんでしょうけど……
宮尾美也
まったく別人になるんじゃなくて、今まで経験したり感じたことが組み変わることかもです〜。
百瀬莉緒
……それでも、一度恋を知っちゃったら、もう元のコドモには戻れないものなのよ。
百瀬莉緒
蝶々が、アオムシに戻れないのと同じかもね……
百瀬莉緒
それでも、恋はしたほうがいいと思うわ。それで女の子は綺麗に、素敵になっていくものだからね。
宮尾美也
よく分かります〜。私も、アイドルを始めて「恋」を知って、どんどん綺麗になってますから〜。
百瀬莉緒
……いや、歌やお芝居で『描かれてる恋』を知る、ってニュアンスじゃなかったんだけどなあ……
百瀬莉緒
まあ、美也ちゃんはそういうナチュラルなところも可愛いからなあ。そのままでも十分魅力的だわ。
宮尾美也
お褒めにあずかり、光栄ですね〜。今度莉緒さんにも、手作りクッキーセットをプレゼントです〜。
百瀬莉緒
「手作りするためのセット」じゃなくて、完成品のほうが嬉しいわね。楽しみにしてるわ。
宮尾美也
……
宮尾美也
……莉緒さん。子供扱いはやめにして、大丈夫ですよ〜。
(台詞数: 41)