私は猫ですよ~。
BGM
ハッピ~ エフェクト!
脚本家
香織
投稿日時
2014-06-22 18:44:59

脚本家コメント
ライトノベルだと思うのよ。我輩は猫であるは。

コメントを残す
宮尾美也
『高垣さんは早晩心が朽ちて死にます。お義兄さんは慾でもう死んでいます。
宮尾美也
秋の木の葉は大概落ち尽くしました。死ぬのが万物の定業で、
宮尾美也
生きていてもあんまり役に立たないなら、早く死ぬ方が賢いかも知れません。
宮尾美也
小林先生の説に従うと、人間の運命は自殺に帰するそうです。
宮尾美也
油断していると、猫もそんな窮屈な世に生まれることになるかも知れません。恐ろしいですね。
宮尾美也
なんだか気がくさくさして来ました。麦芽を発酵させた液体でも飲んで景気をつけましょう。
宮尾美也
コップがお盆の上に三つ並んでいて、二つには茶色い水が半分ほど入っています。
宮尾美也
冷たいのは苦手なんですけど、ものは試しです。このみさんなんかはあれを飲んでは赤くなります。
宮尾美也
猫だって飲めば陽気になるかもしれません。思いきって舌を入れてみました。
宮尾美也
何だか舌を針で刺されたようにぴりりとしました。人間は何の酔狂で、
宮尾美也
このような腐ったものを飲むのかわかりませんが、猫にはどうにも飲み切れません。
宮尾美也
でも、人間は良薬口に苦しと言って、変なものを飲みます。飲んで愉快になれたなら、儲け者です。
宮尾美也
近所の猫に自慢してまわりましょう。飲みにくいのは目を瞑るということで。
宮尾美也
我慢に我慢を重ねて、ようやく一杯飲み干した時、妙なことが起きました。
宮尾美也
始めは苦しかったのですが、飲むほどに楽になって、難なく二杯飲みました
宮尾美也
それからしばらく、自分の動静を伺うため、じっとしていました。
宮尾美也
次第にからだが暖かくなって、頭がぼうっとします。耳も真っ赤です。歌いたい気分にもなります。
宮尾美也
ご主人もお義兄さんも勝手にしやがれって気分です。外に歩きだしちゃいました。
宮尾美也
寝ているのか起きているのかわからない足取りでふらふらしていたら、ぼちゃんと音がして―
宮尾美也
やっちゃいました。何をやったのかわからず、ただ、やっちゃったと思って滅茶苦茶です。
宮尾美也
我に帰った時は水の上です。苦しいので、とにかく爪で掻きましたが、すぐにもぐってしまいます。
宮尾美也
仕方がないので後足で飛び上がっておいて、前足で掻いたら少し手応えがありました
宮尾美也
ようやく頭だけ浮いたのでどこなのかと見回すと、どうやら私は大きな落とし穴の中みたいです。
宮尾美也
こんなところに、人が入れる程の穴を掘るなんて、オチャメさんですね。
宮尾美也
今落ちているのは猫の私なのですが。
宮尾美也
水面から縁までは5メートルくらいあります。足をのばしても飛び上がっても出られません。
宮尾美也
呑気にしていれば沈むばかりです。も掻けば多少は浮きますが、たちまちもぐってしまいます。
宮尾美也
もぐると苦しいのでも掻きますが、だんだんからだが疲れてきます。
宮尾美也
ついにはもぐるためにも掻いているのか、も掻くためにもぐっているのかわからなくなりました。
宮尾美也
その時、苦しさのあまりこう考えたのです。
宮尾美也
こんな呵責に逢うのは落とし穴から上へあがりたいと願うからでしょう。
宮尾美也
あがりたいのは山々ですが、あがれないのはわかりきっています。
宮尾美也
出られないのなら、いくら足掻いても、あせっても、時間の無駄です。
宮尾美也
無理を通そうとするから苦しいんです。つまりません。
宮尾美也
自ら求めて苦しんで、自ら好んで拷問にかかっているは馬鹿気ています。
宮尾美也
もうやめます。勝手にしてください。も掻くのはもうご免蒙ります。
宮尾美也
前足も後足も自然にして、抵抗するのをやめました。
宮尾美也
次第に楽になってきました。苦しいのだかありがたいのか見当もつきません。
宮尾美也
水の中にいるのか、事務所にいるのか、判然としません。
宮尾美也
ただ楽です。いいえ、楽そのものも感じません。
宮尾美也
時間も空間も越えた不可思議な太平に入りました。
宮尾美也
私は死ぬみたいです。死んで太平を得ます。太平は死ななければ得られません。
宮尾美也
南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。ありがたいですね、ありがたいですよ』
宮尾美也
……
宮尾美也
…………
宮尾美也
………………
宮尾美也
…………
宮尾美也
……くちゅん
宮尾美也
遅いですよ~。風邪ひいちゃったらどうするんですか~。ぷんぷん
宮尾美也
そうですね~。暖かいお風呂に入ったらサンドイッチでも食べたいです

(台詞数: 50)