福田のり子
月に照らされ夜を往く。
福田のり子
青春感あるね!
福田のり子
この時間まで走っていたのは久しぶりだった。
福田のり子
気分は旅人、当ては無い。
福田のり子
あ、嘘。今ちょっと自販機を探している。
福田のり子
随分人の気が無いところだけど、こういう所にそんな人工のオブジェクトがあるのだろうか。
福田のり子
と思ったら普通にあった。流石現代!
福田のり子
ここまで人に優しい時代には、旅人も旅人足りえないのだろうか。
福田のり子
まあ、職業欄に「旅人」って書いてる人は確かに信用出来ないよね!
福田のり子
さーて、何か具のある飲み物を……
福田のり子
あ、おしるこあるじゃん!これこれ!
福田のり子
と思ったら「つめた〜い」エリアのおしるこだった。これは色んな意味でいただけない。
福田のり子
「あ、いつの間にかメール来てた」
福田のり子
昴からだった。また後ろに乗せて欲しいとの内容だった。
福田のり子
良いけど、このタイミングでどうしたの……と。
福田のり子
さて、おしるこがだめなら同じ具属性のコーンポタージュを……
福田のり子
あ、やっぱり「つめた〜い」だ。もうこの際冷たくてもいいか。
福田のり子
と思ったら、メールの返信が来てた。「最近暑いからさ」
福田のり子
……言うほど暑くなくない?というかアタシを涼みグッズに使われてもな。
福田のり子
実はメールは苦手だ。直接話したい派だし。テキトーな顔文字で返信しておいた。
福田のり子
さて!キンキンのコーンポタージュ買うぞ!
福田のり子
と思ったらもう返事が帰って来ていた。あの子はああ見えてこういうレスポンスがとてつもなく早い
福田のり子
「今度はプロデューサーも一緒にさ!」
福田のり子
いやいや、後部座席には一人までしか乗れないってばよ。
福田のり子
「プロデューサーは超後部座席に乗せようぜ!」
福田のり子
だめだだめだ!このままメール返してたら一生コーンポタージュ買えない!しばらくおいとこう。
福田のり子
そうしてアタシの妥協と共に120円を吸い込んだ自販機が吐き出したものは…
福田のり子
おしるこだった。
福田のり子
しかも冷たい。
福田のり子
しまった。田舎の自販機あるあるだ。ギャンブルに負けた気分だ。
福田のり子
寒空の下で冷たい缶を握り締めている間に、またメールが来ていた。返事は返してないのに。
福田のり子
メールはターン制ではなかったのだろうか。缶を開けながら確認した。
福田のり子
「今度スイーツ系の食べに行こうぜ!」
福田のり子
今までのやりとりと関係ない話題かい。とりあえず昴はどんな甘味が好きなのか聞いてみた。
福田のり子
「生クリーム」
福田のり子
……
福田のり子
……わかるわぁ。多分甘い感じの奴の中では一番美味しいよね。
福田のり子
ちなみにアタシが好きなのは冷たいおしるこ。これマジで至高。
福田のり子
でも流石に口の中が甘すぎるのでなんか違う物も飲みたくなってきた。
福田のり子
あ、でもそうなるとコーヒーかお茶しかないのか、それは違うわ。
福田のり子
もうこの際コーラで良いや。アタシ感覚では言うほど甘くない!
福田のり子
「いま何してるの?」…わかるわぁ。この子夜なのに暇なのかな。
福田のり子
夜の世界を駆け抜けてる……と返してみた。
福田のり子
さて、さらに聞いたことも無いメーカーのコーラを買ってみた。今回はちゃんと出てきた。
福田のり子
フタを開けた瞬間プシュっとなる快音。旅感あるわこれ。腰に手を当て一気に飲んでみる。
福田のり子
しまった。めんつゆスパークリングだった。これは昴へのお土産にしよう飲みかけだけど。
福田のり子
……その時はじめて、もうすぐ来る明日が何の日なのか思い出した。
福田のり子
そうか、メールが苦手なのはアタシだけじゃ無いのかもしれない。そろそろ帰ろう。
福田のり子
アタシが旅人じゃないのは、きっと帰る場所があるからだ。
(台詞数: 49)