福田のり子
「くっそ見つからない!どこ行ったんだよ!」
福田のり子
踏み込まれた時のアタシの基地を再現するかのように、アタシは研究室で暴れ回っていた。
福田のり子
そもそも、密かに動いているのを政府に知られない様に、アタシは色々な策を講じていた。
福田のり子
科学者として全く役に立たないフリをしていたし、本当に父の研究について調べていた事は、
福田のり子
確実に隠していたはずだ。そのためのカムフラージュとして関係ない事で遊んだし。
福田のり子
挙句の果てにアルバイトまでした。その事は決してバレてないはずだったのに!
福田のり子
監視の目を警戒して、研究記録はノートに書く以外の形で残してはいなかった。
福田のり子
そのノートも、絶対にこの部屋から出さない様にしていた。
福田のり子
その、アタシの塔で得た全てが詰まっていたノートが、アタシが塔の主と会っていた間に……
福田のり子
この部屋から無くなっていた。アタシが羅刹の如く騒いでいるのはそのせいだ。
福田のり子
誰かが持っていった?ここにはアタシ以外には誰にも入れないはずなのに!
福田のり子
あれが政府に知られてしまったら、確実に紗代子ちゃんが大変な事になる。
福田のり子
……どこかで監視にバレた?いや、そもそも今は律子さんが引き受けてくれて……
福田のり子
と、そこでアタシは手を止めた。消去法でだけれど、ある可能性を考えていた。
福田のり子
監視の目は律子さんが引き受けている……。
福田のり子
それを言いだしたのは、律子さんだったはずだ。
福田のり子
色々な人達を連れて遠くに行く、その間に研究を進めろ。確かそう言っていた。
福田のり子
……あの時、確かに引っかかる事を一緒に言っていたのを思い出した。
福田のり子
「私は政府の味方」だと。
福田のり子
言い方が変だったのが引っかかったんだけど、聞き流してしまっていた。
福田のり子
もし、あの言葉が、律子さんなりの最大のヒントだったとしたら。
福田のり子
政府と科学者との板挟みになっていた律子さんの、政府への最後の抵抗だったとしたら。
福田のり子
……そもそも、律子さんが一人で動いた所で、アタシの監視が完全に外れるわけがないんだ。
福田のり子
アタシがちゃんと聞いていなかったから!考えてなかったから!
福田のり子
ちゃんと律子さんを……信じていなかったから。
福田のり子
くっそ!アタシはバカか。完全に嵌められた。
福田のり子
きっと、今頃アタシの推理と父の研究、動力機関の謎はあっちに知れてしまっているんだろう。
福田のり子
これで、塔は確実に完成してしまう。
福田のり子
科学者達が生み出して、自分たちの姿ごと無かったことにしたこの塔が。
福田のり子
……
福田のり子
……アタシが、この塔に来なければ、大人しくしていれば、塔は眠ったままだったかもしれない。
福田のり子
親父が命がけで、アタシを隠してくれたのに……
福田のり子
…………
福田のり子
………………
福田のり子
………………今は、
福田のり子
………………今は、出来ることを考えよう。
福田のり子
アタシは、さっきまでの紗代子ちゃんの話を思い出していた。
福田のり子
あの子の話では、塔の中に信用出来る人はあまり居ない。
福田のり子
けれど、アタシ一人の力ではどうにもならない以上、ここで味方を見つけるしか無いんだ。
福田のり子
貴音さんはどうだろう。あの人なら、紗代子ちゃんをひどい目に合わせたりはしないはずだ。
福田のり子
……でも、あえるかどうか分かんないし、あのカフェにもあれ以来来ていない。
福田のり子
思い出さないと、紗代子ちゃんの味方になってくれる人物を……
福田のり子
……!
福田のり子
一人、いた。
福田のり子
その人も願っていたはずだ。紗代子ちゃんが、女神から人に戻る事を。
福田のり子
紗代子ちゃんの、最初の友達。その人に、どうにかして接触する。
福田のり子
ただ、普通には会えない人物だ。アタシは、最後の希望を託し監視など構わず端末を起動した。
福田のり子
正直、女神様なんてこの世界に必要無い。塔の主がどうなろうが知ったこっちゃない。
福田のり子
でもね、紗代子ちゃん。あんただけは……
福田のり子
生きていなくちゃいけないんだよ!!
(台詞数: 50)