真壁瑞希
ん・・・
真壁瑞希
...目が覚めると私は見覚えのある場所にいた
真壁瑞希
(そうでした・・・もうすぐ所さんが境界にやってくるのでした)
真壁瑞希
...所さんの消滅を確認してからどのくらい経ったのだろう、わかりもしないけど
真壁瑞希
...気付けば私は此処に戻ってきている
真壁瑞希
...あの日、確かに私は所さんに生かされた
真壁瑞希
...所さんの言う通り、あれは・・・私にとって、紛れもなく奇跡だった
真壁瑞希
...私はあの日奇跡を起こしてくれた恩人にもう一度会いたくて
真壁瑞希
...私は手品をしながら各地を回った、しかし、あの日の恩人に会う事は叶わなかった
真壁瑞希
...そんなある日、私が彼女を探している事を知った、彼女の友人を名乗る人達に
真壁瑞希
...彼女は既に亡くなっている事を告げられた、それも私が彼女と出会うより前に・・・
真壁瑞希
...それがわかった後も、私は約束通り手品を続けた、人々に笑顔にした
真壁瑞希
...その後いつの間にか後世に名を残すような、そんなマジシャンに私はなっていた
真壁瑞希
...ただ私は普通の人より早死だったのですが・・・
真壁瑞希
...そして、悪夢のようなこの世界に私は迷い込んだ
真壁瑞希
...皮肉なことに、私はようやく此処で恩人に会う事が叶った
真壁瑞希
...どう抗っても、最期には彼女が消滅してしまう・・・そんな世界
真壁瑞希
...それも私のせいで・・・
真壁瑞希
...煉獄が存在するとしたら、まさに此処の事を言うのかもしれない・・・
真壁瑞希
...それは本来死ぬべきだった私を所さんが生かしてしまった事によって
真壁瑞希
...ある種のタイムパラドックスが起きてしまい・・・
真壁瑞希
...その修正をするために私自身が此処の世界に迷い込んでしまったのかもしれない
真壁瑞希
...なんて皮肉だ・・・私が私を殺すために存在しているなんて・・・
真壁瑞希
...正直な話、それでもいいと思っている
真壁瑞希
...所さんが生きる未来があるという事なのだから
真壁瑞希
...その未来に行くために私は何度でも辛い思いをすることを厭わない
真壁瑞希
結果所さんに罵られる事になったとしても、責められても構わない
真壁瑞希
...その未来に行くために私は何度でも所さんに嘘を吐く
真壁瑞希
...私はマジシャン、嘘を吐くのが仕事です
真壁瑞希
...だから私は嘘を吐いてでも、所さんを生かす奇術を完成させなければならない
真壁瑞希
...それが一万分に一の確率に縋るマジックだとしても構わない
真壁瑞希
...何度でも所さんに「殺してください」と私は懇願をする
真壁瑞希
...所さんを導く為に私は何度でも言葉をかける
真壁瑞希
...優しい言葉も
真壁瑞希
...厳しい言葉も
真壁瑞希
...全ては所さんを救うためのスペルだと信じて・・・私は掛け続けるだろう
真壁瑞希
結構・・・溜まってきてしまいました・・・
真壁瑞希
...鞄を開くと、見覚えのあるキーホルダーが窮屈そうに詰められている
真壁瑞希
そろそろ鞄だけは新調しないといけないかもしれません・・・
真壁瑞希
...そんな小言を漏らしながら、今まで繰り返してきた時間を噛み締める
真壁瑞希
あれ・・・おかしいですね・・・今日は雨ではないはずなんですけどね・・・
真壁瑞希
...自分の涙だとわかってはいる・・・でも今は雨という事にしておこう
真壁瑞希
きっと通り雨です・・・一万分に一の確率です・・・
真壁瑞希
たまにはいいですよね・・・
真壁瑞希
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真壁瑞希
...通り雨が過ぎる頃に聞き覚えのある声が耳に入ってきた
真壁瑞希
「アタシ・・・確か・・・車にはねられて・・・でもなんでここに?」
真壁瑞希
所さん、貴方は一度死にました
真壁瑞希
...これで最後にすると、この手品を完成させると
真壁瑞希
...自分の胸にそう誓って・・・
(台詞数: 50)