それはアニメじゃなくて本当のこと。
BGM
カワラナイモノ
脚本家
sikimi
投稿日時
2015-09-23 19:02:32

脚本家コメント
とある曲からフレーズをいくつか拝借して。
…なんでこの曲をチョイスしたのか。

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篠宮可憐
とあるオフの日、街を散策していると聞き馴染んだ声が聞こえてきた。
篠宮可憐
『滾らせて ダイタンにあなたから♪』
篠宮可憐
事務所でいつもお世話になってる、あずささんの歌声。
篠宮可憐
その声は、ビルに取り付けられた大きなモニターから聞こえていた。
篠宮可憐
私が所属する765プロが先日行ったライブのDVDの宣伝映像らしい。
篠宮可憐
「…愚かと 月が笑う♪」
篠宮可憐
聞こえてくる歌に合わせて、私は口ずさむ。
篠宮可憐
けれど、その歌はすぐに終わってしまう。
篠宮可憐
「次は誰の曲が流れるのかな。春香さん?美希ちゃん?」
篠宮可憐
そんなことを考えながらモニターを眺めていると、あずささんを映していた画面が暗転する。
篠宮可憐
765プロのロゴが現れた後、次の曲が流れ始めた。
篠宮可憐
『夕風運ぶ 黄昏メロディー』
篠宮可憐
「ええっ…!?わ、私…?」
篠宮可憐
素っ頓狂な声を上げて、思わず周りを見渡す。幸か不幸か、私の声は誰も気にしていないみたい。
篠宮可憐
モニターを見直すと、そこには私の姿。
篠宮可憐
普段の私とは違い、何も臆すること無く堂々と歌い上げる私の姿が映し出されていた。
篠宮可憐
モニターの向こうにいる私は、私じゃない別の人のように見えた。
篠宮可憐
……でも。
篠宮可憐
あのステージで歌ったことも。緊張のせいで、舞台袖で震えていたことも。
篠宮可憐
春香さんに震える手を握って貰ったことも。
篠宮可憐
ステージが終わって、感極まってプロデューサーさんに抱きついちゃったことも。
篠宮可憐
そのせいで美希ちゃんにスゴい視線で睨まれたことも。
篠宮可憐
全部、私が体験した、私だけの大切な事。
篠宮可憐
お客さんが照らしてくれたサイリウムが素敵な世界を創ってくれて。
篠宮可憐
皆の気持ちが嬉しくて、歌っている間は心がフワフワするような、不思議な気持ち。
篠宮可憐
まるで夢みたいだったけど、全部現実にあった、本当のこと。
篠宮可憐
アニメでもドラマでも小説でも無い、本当のこと。
篠宮可憐
あんなに素敵なことを経験したんだから、今日はちょっとだけちゃんと前を向いて歩いてみよう。
篠宮可憐
あの日、堂々とステージで歌いきった私に笑われないように。
篠宮可憐
いつの間にかモニターから私の姿は消えて、代わりに奈緒さんが楽しそうにステップを踏んでいた。
篠宮可憐
奈緒さんの歌を口ずさみながら、私は歩き始めた。
篠宮可憐
『あの…、もしかして今モニターに映っていた篠宮可憐さんですか?』
篠宮可憐
「ひゃ、ひゃいっ!?ご、ごめんなさいっ!!」
篠宮可憐
──もう少し頑張りましょう。 ステージの私より。

(台詞数: 34)