北上麗花
水盤の上にぷかぷか浮かぶ。
北上麗花
流されるがまま上を見て。
北上麗花
どこまでも続く同じ景色。
北上麗花
低い夜空と薄く延ばした雲。
北上麗花
たまに飛行機が飛んでく。
北上麗花
もちろん手を伸ばしても届かない。
北上麗花
掴んでも、開いても、当たり前だけど何もない。
北上麗花
これは空虚? それとも虚無?
北上麗花
ああ……これは多分、魚の気持ち。
北上麗花
両手と両脚を伸ばして心地いい。
北上麗花
このまま凍てつくような水の上。
北上麗花
ゆらゆらたゆたう魚の気持ち。
北上麗花
じゃあ潜ってみたらどうなるかな。
北上麗花
すると多分ね、街があるよ。
北上麗花
そうしたら喫茶店に入るんだ。
北上麗花
そして窓際の席に座るの。
北上麗花
でね、水のフィルターがかかった月を観るの。
北上麗花
空飛ぶ魚たちは優美に舞って。
北上麗花
きっと素敵だよね。
北上麗花
でも。
北上麗花
私はやっぱり、たゆたってる方がいい。
北上麗花
冷たい空気を吸うのが好きなんだ。
北上麗花
だから、ずっとこのままでいい。
北上麗花
水盤の端には何があるのかな。
北上麗花
砂浜かな。岩場かな。それとも何もないのかな。
北上麗花
何もないといいなぁ。
北上麗花
……。
北上麗花
うん、やっぱり広い。
北上麗花
どこまでも続く同じ景色。
北上麗花
あるのは暗い夜空と薄く延ばした雲。
北上麗花
で、たまに飛行機が飛んでく。
北上麗花
もちろん手を伸ばしても届かない。
北上麗花
だから、ね。
北上麗花
いつまでも私は魚の気持ち。
(台詞数: 34)