高山紗代子
こんばんは。また来ちゃいました。
天空橋朋花
こんばんは。うふふ、いつもありがとうございます。
天空橋朋花
どうぞ、ごゆっくりご覧になって下さい。
高山紗代子
あ、この子……。
天空橋朋花
綺麗でしょう? 何百年も前の物とは思えないほど。
高山紗代子
どうして、この子は棺の中に?
天空橋朋花
恋人の欠落、でしょうか。
高山紗代子
恋人……。
天空橋朋花
この人形、本来は対だったらしいんですよ。
高山紗代子
らしい?
天空橋朋花
ええ、買い取らせて頂いたんです。青い瞳をした小さな子から。
高山紗代子
へえ、素敵です。そのお話、聞かせて頂いても?
天空橋朋花
うふふ。では……
天空橋朋花
その子との出会いは、遠い国の小さなアンティークショップでした。
高山紗代子
ここみたいな、ですか?
天空橋朋花
こんなに気味暗くありませんよ。柔らかなお日様の差し込む、洒落たお店です。
天空橋朋花
対照に、その子は随分と煤で汚れた身なりをしていましてね、
天空橋朋花
傍から見ても、良い生活を送っているようには見えませんでした。
天空橋朋花
お話を聞けば、やはり人形を売って、お金を作ろうとしていたみたいです。
高山紗代子
……。
天空橋朋花
ですが、この人形は対になって初めて価値の出る品物。当然ながら禄な値段にはなりません。
高山紗代子
なるほど。そこで店主さんがお買い上げになったと。
天空橋朋花
ご賢察の通りです。
高山紗代子
ところで、恋人さんの方は捜さなかったんですか?
天空橋朋花
……捜すまでもありませんでした。
高山紗代子
え?
天空橋朋花
その子から聞いたんです。恋人の行方。
高山紗代子
ど、どうだったんですか?
天空橋朋花
どうやら紛争で家ごと巻き込まれたらしく……既に失くなった、との事です。
高山紗代子
そんな……。
天空橋朋花
まあ、私たちが感じる普通ですら裕福と思える国です。
天空橋朋花
察しはついておりましたが、いざ面と向かって聞くと悲しくなりますね。
天空橋朋花
……以来、彼女はずっと独りぼっち。
天空橋朋花
死者を装い、若く美しい姿のまま、来る筈のない恋人を待ち続けているのですよ。
高山紗代子
……。
天空橋朋花
ごめんなさい。気を悪くされましたか?
高山紗代子
……ましょう。
天空橋朋花
……?
高山紗代子
新しく作りましょう、恋人!
天空橋朋花
……はい?
高山紗代子
だってこんなに可愛いじゃないですか! 勿体ないですよ!
天空橋朋花
それは……そうですが……。
高山紗代子
この子なんてどうです? あああそうだ! 今度、私の家から、いい子を厳選して……!
天空橋朋花
ふふ、うふふふ……。
高山紗代子
……あの?
天空橋朋花
いえ……すみません。やはり、あなたは面白い御方だと思いまして。
天空橋朋花
人形相手なのに、随分と親身になってくれるんですね。
高山紗代子
至って普通ですよ。だって、みんな生きているじゃないですか。
天空橋朋花
……ええ。
天空橋朋花
そう言って頂けると嬉しいです。
(台詞数: 50)