向かい合わせの表裏一体
BGM
ココロがかえる場所
脚本家
nmcA
投稿日時
2017-06-20 23:53:18

脚本家コメント
バラエティ番組の一幕。
アイドル周防桃子の過去を知る人に話を聞きに行きました。

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周防桃子
「はぁ?周防桃子を知っているかって」
周防桃子
「そんな当然のこと聞かないでよ、アタシを誰だと思ってるの?」
周防桃子
「名子役といったら周防かアタシかと言われていたんだよ?まさか知らないわけじゃないよね?」
周防桃子
「……なら、いいの。最近はあの子ばっかり注目されるから、悔しくってさ」
周防桃子
「でも、まさか、あの子がアイドルをやるなんて、思わなかったなー」
周防桃子
「だって、知ってる?あの子が舞台でアイドルと一緒になったときに何やったか」
周防桃子
「怒鳴りつけたんだよ、『出ていって!』って。すごいでしょ」
周防桃子
「ああ、ごめんね、それで何を聞きたいの?」
周防桃子
「周防桃子との思い出?う~ん……」
周防桃子
「そうだ、あの子と初めて会ったときの話なんてどう?」
周防桃子
「映画のオーディションなんだけど……知ってる?タイトルは……」
周防桃子
「そうそう、主人公と転校生が学校行事の謎を解いていく話なんだけど、原作が小説だったの」
周防桃子
「だから、オーディションでも小説からセリフが使われたんだけど、そのやり方がねー」
周防桃子
「誰のどのセリフをやるか当日まで分からなかったの!ねぇ、信じられる?」
周防桃子
「もうページの色が変わるまで読んだわよ。カバーなんてボロボロで無いほうがマシってぐらい」
周防桃子
「それで本番当日のことなんだけど、その頃のアタシは、売り出し中ってことで、何て言うのかな」
周防桃子
「……そう、見栄!見栄を張りたくて小説をわざわざ買い直して持っていったのよ」
周防桃子
「アタシぐらいになれば、読み込みなんて必要ないのよって、ね」
周防桃子
「笑っちゃうでしょ。そんな舐めた態度でオーディションに受かろうだなんて」
周防桃子
「それで自信満々で控室に行くとみんなボロボロの本を読んでいるわけ。その時気付いたわ」
周防桃子
「あー、アタシ、やっちゃったなーって」
周防桃子
「でも、帰るわけにもいかないから隅っこで出番を待ってたわ。新品の本を膝においてね」
周防桃子
「そのまま、ボーっとして、お母さんになんて言い訳しようかなって考えてた時かな」
周防桃子
「目の前の子がアタシと同じように新品の本を膝に置いていたのに気づいたの」
周防桃子
「そ。それが周防桃子」
周防桃子
「ただね、あの子はアタシと違って目をつぶって、ずっと口を動かしていたわ」
周防桃子
「きっとセリフを確認していたんでしょうけど、結局一度も本を開かなかったわ」
周防桃子
「目を開けたのだって、本番直前。パッと目を開いたと思ったらアタシを見てぎょっとしてたわ」
周防桃子
「人の顔を見て驚くだなんて、失礼よね。どれだけ集中していたのかしら」
周防桃子
「え、そのオーディションの結果?」
周防桃子
「イジワルね。もちろん周防桃子が主役を獲ったわよ」
周防桃子
「アタシ?ぜんぜんダメ。もう完全に動揺しちゃって。それでも転校生役になれたけどね」
周防桃子
「それ以降かな。オーディションに、ううん、演技に集中するようになったのは」
周防桃子
「……今ならね、あの時、周防が新品の本を持ってきた理由が分かる気がするの」
周防桃子
「あれ、開くつもりはなかったはずよ」
周防桃子
「セリフを全部覚えているという自信を事実に変えるためにわざわざ持ってきたのよ」
周防桃子
「誰よりも演技に真剣だったからね。ほら、さっきアイドルに怒鳴りつけたって言ったじゃない?」
周防桃子
「あれ、実はアイドルの子が適当に演技してたからなのよ。ちょっとアタシもスッキリしちゃった」
周防桃子
「ホント……あんな子と同期でいるだなんて幸せだけど、恐ろしいわ」
周防桃子
「ところで、何でこんなこと聞いたの?」
周防桃子
「……は?いや、冗談でしょ?」
周防桃子
「いやいやいやいや、なんで周防がアタシのことを」
周防桃子
「そりゃあ、周防がアイドルになってから子役界を引っ張ってきたのはアタシだけど」
周防桃子
「違う?……へぇ、あの時、アタシが新品の本を持ってきてたから?」
周防桃子
「……ホントに?ホントにそう言ったの!?周防桃子が!?」
周防桃子
「はは、あははははは!」
周防桃子
「そっかそっか、お互い、似た者同士だったんだね。それなのに……。おっかしいの」
周防桃子
「え、最後に周防へ一言?……そうだなー……よしっ」コホン
周防桃子
「あなたのおかげで今も子役をやっていけています。いつかまた共演したいです。あと……」
周防桃子
「お互い、これからも見栄を張ってがんばっていこうね!」

(台詞数: 50)