周防桃子
「はぁ…」
周防桃子
桃子以外誰もいないレッスンルーム。そこに大きな溜息の音が響く。
周防桃子
レッスンなんてないのに、桃子は強がって事務所を飛び出してしまった。
周防桃子
そういえばこの事務所に来るまでは、楽屋もこんな寂しい所だった。
周防桃子
お家も、自分の部屋も、桃子以外誰もいない。
周防桃子
桃子がいてほしい時に、誰も傍にいない。
周防桃子
それなのに、都合のいい時だけは特上のいい顔を浮かべて桃子に擦り寄って来る。
周防桃子
それがすごく嫌だった。
周防桃子
でも今回は違う。
周防桃子
桃子から突き放しちゃったんだよね。
周防桃子
求めていたもののはずなのに、それを手にしちゃったら…
周防桃子
今度は失うのが怖くなっちゃうから。
周防桃子
だから、逃げ出した。
周防桃子
冷たい言葉を言い放った。
周防桃子
つまらない意地を張った。
周防桃子
「はぁ…どうしてだろう…」
周防桃子
「桃子…最低だよね」
周防桃子
だからこうしてまた一人。
周防桃子
ひとりぼっちで、誰も桃子の弱音が見れない場所で…
周防桃子
桃子はひとり、むせび泣く。
周防桃子
床にポツポツと目から零れた雫が落ちて、そこに染み込んでいく。
周防桃子
こうやってたまに、誰にも見られないところで、泣くことがある。
周防桃子
理由は様々だけど、大抵は家族の事だ。
周防桃子
こうなる以前は自分の部屋で泣いてたっけか…
周防桃子
毎回同じ場所で泣いていたからかな。
周防桃子
そこには涙でシミができちゃった。
周防桃子
けど、桃子が自分で気づくまでわからなかったよ。
周防桃子
お父さんもお母さんも知らない。見向きもしない。
周防桃子
きっと、興味もないんじゃないかな。
周防桃子
これが星梨花だったら、たぶん気付いてくれる。
周防桃子
たぶん、あの家の人はみんな気付いてくれる。
周防桃子
それが煩わしくて。
周防桃子
それが…
周防桃子
妬ましい。
周防桃子
「あっ、そっか…」
周防桃子
「桃子、嫉妬してたんだ」
周防桃子
「これが嫉妬心なんだ…」
周防桃子
「なんだかバッカみたい…」
周防桃子
その言葉が空を切って、自分を現実に引き戻す。
周防桃子
桃子は迷子だ。
(台詞数: 40)