周防桃子
わかる…伝わってくるよ。
周防桃子
みんなの声、とまどい、期待…。
周防桃子
待っててね、今、そこに行くから…。
周防桃子
慣れた衣装に、音源も準備よし。
周防桃子
元々あったものを取り出して使っただけだから、準備にはほとんど時間はかからなかった。
周防桃子
そして、たった今、千早さんが最後の準備を終えてくれた。
周防桃子
…これで、桃子をしばるものは、もう何もない。
周防桃子
ルールも、勝敗も、優勝へのプレッシャーも。
周防桃子
そんな重苦しいものは、ぜんぶ投げ捨ててしまった。
周防桃子
最後に残ったただ一つ。これから桃子がすることは。
周防桃子
見てもらう。
周防桃子
貴音さんに。
周防桃子
美希さんに。
周防桃子
桃子を。
周防桃子
ここにいる、桃子を!
周防桃子
シューズの先から、床のきしみが空気をふるわせるのが聞こえた。
周防桃子
一歩一歩進むたびに、心臓から流れる熱いものが指先までしみ込んでいくのがわかる。
周防桃子
遠くで、千早さんがじっとこちらを見ていた。
周防桃子
ありがとう。もう、大丈夫。
周防桃子
そう目で言うと、千早さんはさっと舞台袖へ帰っていく。
周防桃子
…そうだね。二人だけじゃない。
周防桃子
千早さんに、春香さん。静香さん。
周防桃子
このみさん。可憐さん。琴葉さん。
周防桃子
見守っている劇場のみんな。
周防桃子
そして、この場に集まってくれたファンの人たち。
周防桃子
カメラを通して、見てくれる人たちも。
周防桃子
みんな、ごめんなさい。そして、付き合ってくれてありがとう。
周防桃子
…これは、桃子のワガママ。
周防桃子
その代わり、今から最高の桃子を見せてあげるから!
周防桃子
静かなステージの真ん中に立って、周りを見回した。
周防桃子
たくさんの、数えきれないほどの視線が、桃子に熱をもって突き刺さってくるのがわかる。
周防桃子
…そう。みんな、準備は、いいんだね?
周防桃子
それじゃ、まとめて夢の世界に連れて行ってあげる!
周防桃子
そして桃子は、高らかに始まりの声を上げた。
周防桃子
「…いくよ。『デコレーション・ドリ～ミンッ♪ 』!!」
(台詞数: 35)