周防桃子
これは桃子がまだ、こんなに擦れていない頃の話。
周防桃子
大人を信じれなくなる前の話。
周防桃子
桃子がテレビに出ると、お父さんも、お母さんも喜んでくれた。
周防桃子
顔をしわくちゃにして、それはもう嬉しそうに…
周防桃子
その顔が今でも忘れられないんだ。
周防桃子
もう戻れないあの頃。
周防桃子
桃子のお家は幸せに満たされていたよね。
周防桃子
笑顔が充満してたよね。
周防桃子
笑い声が、玄関にいても、どの部屋にいても、聞こえてきたよね。
周防桃子
今はもう、遠い過去の話。
周防桃子
桃子ね、お家の明かりはいつだって絶えないものだって、錯覚してたんだ…
周防桃子
過ぎ去っちゃった、一時の幸せ。
周防桃子
時が経つにつれて、桃子が大きくなっていくにつれて…
周防桃子
両親が桃子に求める理想も膨大になっていったんだ。
周防桃子
思考の異なる二人の人がいれば二通りの理想があるのが当たり前だよね。
周防桃子
だからね、それが交わるとは限らないんだ。
周防桃子
突き詰めていけばね、摩擦が生まれる。
周防桃子
あの時、二人は既にすれ違っていたのかもしれないね。
周防桃子
ある寒い冬の日…
周防桃子
桃子に、別々の分かれ道を示して、答えを迫った日から…
周防桃子
桃子がそれまでいた幸せな家庭(せかい)は、音を立てて崩れ去ったのかな…
周防桃子
あれから、家は終始暗くなったんだ。
周防桃子
笑顔と期待は憎悪に変わって、笑い声は怒鳴り声になる。
周防桃子
右手と左手。
周防桃子
お互いの望んだ道に引き入れようと桃子の手を引っ張り合ったよね。
周防桃子
昔みたいに、仲良くはんぶんこすればいいのにね。
周防桃子
どこにいても、いつになっても、桃子がいれば、喧嘩になる。
周防桃子
一方が笑えば、一方が悲しくなる。
周防桃子
桃子はね、それが嫌で、はじめは二人の間を右往左往してたんだ。
周防桃子
そうしたら、自分自身の方向性はいつの間にか見失っていたんだ。
周防桃子
それから、少し距離を置いたところで、二人を観るようになった。
周防桃子
二人はね、それぞれ桃子の事を想っているようで…想っていない。
周防桃子
結局は、自分の為に桃子が欲しいんだって…
周防桃子
それで、思ったんだよね、大人って醜くて、汚いものだって…
周防桃子
そっからかな、桃子がね、大人を信用できなくなったのは…。
周防桃子
そっからかな、桃子が、こんなに捻くれちゃったのは…。
周防桃子
でもね、こんなこと言ってるけどね…
周防桃子
桃子も所詮は二人の子なんだよ…
周防桃子
だってね…
周防桃子
桃子はね…
周防桃子
二人が一緒に笑っている顔を、また、見たいだけなんだもん。
周防桃子
だから、今は、まだ帰れないんだ。
周防桃子
桃子はまだ、悪い子だから…
周防桃子
でもね…
周防桃子
アイドルになって輝けば…
周防桃子
二人はまた笑ってくれるよね?
(台詞数: 46)