周防桃子
桃子のウェディングドレス姿、お兄ちゃんはほめてくれたけど...。
周防桃子
でも、桃子だけ恥ずかしがってて、それを見ているお兄ちゃんは、ニコニコしてて...。
周防桃子
なんか、不公平。納得がいかない。
周防桃子
...そうだね。ここは、お兄ちゃんにも同じ気持ちになってもらわないと。
周防桃子
そう決心した桃子は、久しぶりに頭を役者モードに切り替えた。
周防桃子
頭の中で台本を組み立てて...。
周防桃子
教会で花嫁さんと花婿さんが愛を誓う場所まで歩いていって、くるっとお兄ちゃんの方へ振り向く。
周防桃子
そちらに向ける顔は、前に共演したドラマの、花嫁役の女優さんがしていた顔を参考にしたもの。
周防桃子
そして、セリフは...
周防桃子
「桃子を...お兄ちゃんのお嫁さんにしてくれますか...?」
周防桃子
...お兄ちゃんのニコニコ笑いが止まった。
周防桃子
ふふん、驚いて声も出ない?天才子役って言われたのは、ダテじゃないんだよ。
周防桃子
「...何をうろたえてるの?こんなの、演技に決まってるでしょ。」
周防桃子
急に素に戻った桃子の冷たい声に、ようやくお兄ちゃんは気を取り直したようだけど。
周防桃子
まだまだ。これじゃ終わらないよ。
周防桃子
「桃子のこと、幸せにしてね...?」
周防桃子
次は、涙で目をうるませた迫真の演技。さっきのが演技だって知ってても、これは効くでしょ?
周防桃子
演技か本当か、とまどっているお兄ちゃんの目の先で、くるりと変わって涙も引っ込んだあきれ顔。
周防桃子
「これも演技。大丈夫?こんなにだまされやすいと、桃子の方が心配になってくるよ...。」
周防桃子
二回も続くと、さすがに自分がからかわれてると気付いたみたい。少し落ち着いてきたかな?
周防桃子
さて、次は...。
周防桃子
「桃子は...病める時も健やかなる時も...お兄ちゃんを愛し続けると...誓います。」
周防桃子
...こんどは苦笑いでスルーされちゃった。
周防桃子
まあ、そうだよね。セリフもわざとらしかったし。
周防桃子
「うん、もちろん演技だよ。お兄ちゃんが慣れてきちゃったから、ちょっとつまらないね。」
周防桃子
そう言って、そろそろ飽きたって感じでお兄ちゃんのところへ戻って。
周防桃子
「はあ...。慣れないヒールの靴だから、歩き疲れちゃった。」
周防桃子
「ねえ、お兄ちゃん。桃子、もう歩けないから、控室まで運んでよ。お姫様だっこがいいな♪」
周防桃子
逆に子供らしいわがままだと思って安心したのか、お兄ちゃんは言うとおりにしてくれた。
周防桃子
...残念。今までのは全部前フリだよ。ガードが甘いね、お兄ちゃん。
周防桃子
抱え上げられたところから、首に手を回して、体を起こして。
周防桃子
うん。これで、同じ目の高さ。
周防桃子
いつもの、上から優しく桃子を見る目が通用しないこの場所で。
周防桃子
ここ一番、クライマックスの決めゼリフを。
周防桃子
「..もしお兄ちゃんがずっと待っててくれるなら、さっきの言葉、全部ホントにしてもいいよ?」
周防桃子
目をそらすこともできずに、驚き顔でこっちを見つめるその顔が面白くて、桃子はクスッと笑って。
周防桃子
たぶんお兄ちゃんが言ってほしいと思ってる続きのセリフは、ぜったい言ってあげないって決めた。
周防桃子
...どう?桃子の本気、思い知ってくれたかな?
周防桃子
ドキドキしたでしょ♪
(台詞数: 39)