周防桃子
「ちょっとお兄ちゃん、今日の着物での撮影、大丈夫なの?」
周防桃子
「見た感じ、このロケ場所ってほとんど平坦だよね。それなのに、みんなと一緒に映るの?」
周防桃子
「……桃子の背の低さが、際立つよ。こういう時は地形を使って差を埋めるのがセオリーなのに。」
周防桃子
「それができないよね。そのくせお兄ちゃんは他の子に付きっ切り?桃子が踏み台持ち歩くの?」
周防桃子
「……我に策有りって、信用できないなあ。」
周防桃子
……
周防桃子
……というわけで、桃子はいま、背の高い「ぽっくり」を履かされてます。
周防桃子
確かに背の差はカバーできるし、着物に合ってるし、桃子だけが履いてるから特別感も有るよ。
周防桃子
でも……もう足首が痛いよ。さっさと終わってくれないかな。
周防桃子
お兄ちゃんがいるならジュースでも買いに行かせて、頼んだのと違うとか、八つ当たりできるのに。
周防桃子
……
周防桃子
嫌だなあ、そんなこと考えるなんて。お兄ちゃんだって一生懸命仕事を取って来て……
周防桃子
事務所のために沢山の子が出れるよう交渉して。桃子のことも考えてくれてるのに。
周防桃子
……ふふっ、でも変なの。
周防桃子
ちょっと前までの桃子なら、こんな条件でお仕事できないって、マネージャーさんに我儘言うか、
周防桃子
スタッフさんに当たり散らしてるだろうなあ。桃子も「オトナ」になったってこと?
周防桃子
……違うよね。お兄ちゃんも、他のみんなもまだまだ頼りないから、桃子がしっかりしないと。
周防桃子
……スタッフさん達が用意したステージでだけ、芸能人の笑顔を作るのは簡単だよね。
周防桃子
多分それは、誰かが据え付けてくれた「踏み台」に乗るのと同じ。そこから先には行けない。
周防桃子
自分の足で、前に進んで行かないとね。「ぽっくり」みたいに、辛いこともあるだろうけど。
周防桃子
……そんな事が考えられるのは、桃子が大人になっていけるからかな?
周防桃子
……
周防桃子
「今日の撮影、有難うございました。またの機会が有りましたら、その時も宜しくお願いします。」
周防桃子
「……プロデューサーさん、お疲れ様です。車はどちらですか?」
周防桃子
「……スタッフさん達の前では、言葉も選ぶよ。今日は一人きりで大変だったんだから。」
周防桃子
「だから帰ったら、桃子の我儘を聞いてくれるよね?とりあえず、着いたら事務所までおんぶね。」
(台詞数: 26)