ジュリア
季節外れの嵐の日から暫く経つ。
ジュリア
あの日、あたしが逃げるように辿り着いた場所は居場所になった。
ジュリア
そこは、傷付いたあたしの拠り所になって、隠れ場所にもなった。
ジュリア
心に根差す、新しいあたしの"家"は千鶴(あなた)がくれたんだ。
ジュリア
この場所で、あたしの夢(きもち)と素直になろうって思えた。
ジュリア
だからこそ、前より力強く、より気持ちを込めて歌が歌える。
ジュリア
千鶴(あなた)が支えてくれて、あたしは今ここに立っている。
ジュリア
そう考えるだけで、あたしは独りじゃないって…
ジュリア
少し気持ちが楽になるんだ。
ジュリア
あたしには"夢"がある。
ジュリア
その"夢"を叶えるんだ。
ジュリア
だから、あたしはギターを奏でて…
ジュリア
だから、あたしはギターを奏でて、魂を震わせる。
ジュリア
だから、あたしは声を出して…
ジュリア
だから、あたしは声を出して、夢を歌うんだ。
ジュリア
今日も飽きる事なく歌を歌い続けた、ギターを弾き続けた。
ジュリア
きっと、明日も、明後日もそうだろう。
ジュリア
もし疲れたら、少し休むんだ。
ジュリア
あたしには帰る場所があるからな…
ジュリア
「ふぅ…これくらいにするか…」
ジュリア
いつもの定位置、あたしだけの舞台。
ジュリア
ここに来たのは昼過ぎくらいだろうか…
ジュリア
それから、いつも夕方くらいにやってくる中学生とセッションをして…
ジュリア
少し話をして、別れて、気付けばもうこんな時間だ。
ジュリア
夜の帳はいつの間にか下りていて、空を覆っている。
ジュリア
吐いた息は白く染まって宙を昇っていく。
ジュリア
ぼーっとそれを眺めていたら、夜空に向けてどこまでも駆けて行ってくれるような気がした。
ジュリア
立ち並ぶビルの光に負けないように、夜空には星屑が散らばっている。
ジュリア
今日も星空は綺麗だ。
ジュリア
あの星屑達が降ってきたら、それは、どんなに幻想的な光景になるんだろう。
ジュリア
神様はそんな事を考えているあたしの頭の中を覗き込んだみたいに…
ジュリア
ぱらぱらと、空からは粒子のようなものが落ちてくる。
ジュリア
「星屑…?」
ジュリア
つい、驚いて小言を零したけれど、冷静に考えればそれが星屑でないことがわかる。
ジュリア
空から降って来る白いもの、それを空からの贈り物という人もいるだろう。
ジュリア
「雪だ」
ジュリア
でも、なんだってこんな時期に降雪なんてするんだろうか…
ジュリア
今年の異常気象ってやつは本当にクレイジーだ。
ジュリア
季節外れの嵐の次は雪、もう季節外れというよりも、常識外れだろ。
ジュリア
もうとっくに春になってもいい時期だっていうのに、いっこうに春は訪れない。
ジュリア
専門家がこの現象については色々と議論を重ねているようだけれど…
ジュリア
あたしにはさっぱりわからない。
ジュリア
ただ、ひとつだけわかるのは、きっと春が来ないのには"それなりの理由"があるってこと。
ジュリア
でも、それも悪くないって思った。
ジュリア
「そろそろ帰るか…」
高木社長
「キミ」
ジュリア
「ん、あたし?」
高木社長
「ああ、キミだよ、キミ」
高木社長
「いやあ、ここら辺でいい歌が聞けるって聞いて足を運んだんだがね…」
高木社長
「せっかくだ、一曲、歌って聞かせてみてくれないか?」
(台詞数: 50)