ジュリア
旅立ちっていうのは突然やってくる。
ジュリア
予期していない時にこそ、強いられるんだ。
ジュリア
実際のところ、ありふれた冒険譚の序章で語られている様な綺麗ごととは程遠いんだ。
ジュリア
あたし達の旅立ちも例外じゃなかった。
ジュリア
あたし達の旅立ちは、家族の離散でもあったんだ。
ジュリア
あたしより年下の幼子の妹と、母を家に残して、父は旅に出たんだ。
ジュリア
本当はあたしも置いていくつもりだったんだろうな。
ジュリア
けれど、あたしは無理やり旅についていった。
ジュリア
それがあたしにできる役目だと思ったんだ。
ジュリア
父が旅に出た理由は家族を取り戻す為。
ジュリア
呆れちまうよな…
ジュリア
だって、自分から捨てた家庭を取り戻す為って矛盾してるだろ?
ジュリア
でも、そうまでしてても父は求めたんだ。
ジュリア
理想の家庭の在り方。
ジュリア
ごく普通の幸せを手に入れる為にな。
ジュリア
けどな、あたし達は十分幸せだったんだ。
ジュリア
厳しい生活環境だったけれど、それなりにやって、幸せを育んでいたよ。
ジュリア
ただ、幼子の妹がね、医者も匙を投げだすような病にかかったんだ。
ジュリア
父は治してあげたかったんだろうな。
ジュリア
ある日、村の酒場でこんな噂を聞いたんだ。
ジュリア
どんな病でも治すことのできる万能の薬があるって…
ジュリア
人はそれを賢者の石と呼んでいたよ。
ジュリア
嘘か本当かもわからないそんな噂を鵜呑みにして、父は旅立ちを決意したんだ。
ジュリア
結果として、家族を犠牲にして、捨てる事になってしまうとしても…
ジュリア
藁にも縋る想いで、それを信じたんだろうな。
ジュリア
手にさえ入れてしまえば、結果は全て過程に変わって、家庭を取り戻すことが出来るって…
ジュリア
そう思ったんだろうな。
ジュリア
あたしは共感できなかったよ。
ジュリア
あたしはその行動原理が理解できなかったさ。
ジュリア
でもついていったんだ。
ジュリア
あたしが行かなきゃ、彼は一人になっちまう。
ジュリア
独りになっちまったら、もう戻ってこれないって思ってさ。
ジュリア
それが長い長い旅の始まりだった。
(台詞数: 33)