黒井社長
透「着いたぜ...キミの足りないものがある場所にな。」
ジュリア
「ここは...港町か?」
ジュリア
...あたしは『自分に足りないもの』を聞くため、プロデューサーである夏木透といた。
黒井社長
透「ここはストリートミュージシャンが多く集まる場所さ。 今日は誰もいないけど。」
黒井社長
透「とりあえず立ち話もアレだし...ノド渇いたっしょ♪ ほらよ、オゴりだ。」
ジュリア
そう言い、ヤツがあたしに向かって投げた缶コーヒーをあたしは両手でキャッチする。
黒井社長
透「ナイスキャッチ! それじゃ、飲みながら話でもしていこうじゃないですか。」
黒井社長
透「...いきなりだけど...キミはなぜ勝ち残れなかったと思う?」
ジュリア
突然痛いところを突いてきたコイツに、あたしは少しイラッとしながらも答える。
ジュリア
「...わからないけど...きっと努力が足りなかったんだと思う。」
ジュリア
「あたしは思い上がってたみたいだ...もっと実力をつけなくちゃな」
黒井社長
透「...なるほどね~♪ 要は自分の力不足で歌を台無しにしてるってところか?」
ジュリア
この男にあたしの言ったことが伝わってるみたいだ...あたしは続けて言う。
ジュリア
「あたしの想いを、生きざまってヤツを、歌でみんなに届けたいんだ。」
ジュリア
「ロックはあたしに希望をくれたんだ...その想いを伝えるためにあたしは...」
黒井社長
透「はい、アピールタイムしゅーりょ~♪ 正直、聞くだけ意味なかったな~。」
ジュリア
いきなり話を切られて、あたしは思わず夏木透に噛みついた
ジュリア
「おい、それってどういう意味なんだよ。 あたしが何か間違った事言ったか?」
黒井社長
透「う~ん...間違いだらけだな。 実力があるのに...もったいない。」
黒井社長
透「いや...経験者だからこそ...かもだけどね。 とにかく、間違いがひどすぎる。」
ジュリア
...間違い? ...自分の力不足...それ以外の何が問題なんだ?
ジュリア
「じゃあ教えてくれよ。 あんたの意見はあたしのとどう違うんだよ?」
ジュリア
ヤツはあきれたように首をかしげ、ため息をついた後に答えた
黒井社長
透「...キミさ、自分を信じていないだろ?」
黒井社長
透「正確には自分の演奏を楽しんでいない。だから魅力もないし、心に響かない。」
黒井社長
透「ロックにしがみつくのは、からっぽな自分を埋めてくれる道具だから、だろ?」
ジュリア
「...そんなこと...!!」
黒井社長
透「ないのか? さっきからキミの言葉からそういう風にしか聞こえないんだけど。」
ジュリア
あたしは必死で反論しようとするけど...
ジュリア
あたしは必死で反論しようとするけど...言い返せなかった。
ジュリア
もしかしたら、自分でも薄々気が付いていたことをはっきりと言われたからかもしれない...
黒井社長
透「『自分の事が嫌いですけど、皆さんは好きになってください。』ってことか?」
黒井社長
透「そんなワガママなガキの言葉なんか、聴いてるヤツに刺さるわけがないだろ。」
ジュリア
...夏木があたしを見下すような目で話を続ける...その口調はさっきとはまるで別人だ。
黒井社長
透「どんなに長く生きてたって、わからない事や答えがたくさんあるんだ。」
黒井社長
透「それを苦労もしてねぇ中坊がわかったみたいに語るとか、調子乗りすぎじゃねぇの?」
ジュリア
「...」
ジュリア
「...わかってるよ...」
ジュリア
「...わかってるよ...そんなことくらい...」
ジュリア
...あたしはプレッシャーの中で、絞り出すように言葉をつなぐ。
ジュリア
「...あたしだって、まだわかんない事ばかりさ...だけど、」
ジュリア
「...それでも、あの日聴いた歌のような、すばらしい歌をみんなに聴かせたい。」
ジュリア
「それはきっと、あたしにしか出来ないことだから...!」
黒井社長
透「...」
黒井社長
透「...あっそ。 ならいいんじゃね?」
黒井社長
透「ただ気になったのは、『ロックシンガー』じゃなくていいじゃん?ってこと。」
ジュリア
『ロックシンガーでなくてもいい』...あたしは完全に盲点を突かれていた
黒井社長
透「...素直になんなよ。 自分の中身と向き合って、考え直してみるんだな。」
ジュリア
夏木透はあたしを送るためか、背を向けて車の方へ歩いて行った。
ジュリア
...ヤツから言われた言葉に、今のあたしはただ、悩むことしかできなかった。
(台詞数: 50)