ジュリア
...目の前にはさっきまであたしが立っていたステージ...今は人影と共に映っている。
ジュリア
...たった数メートル、それだけの距離がものすごく遠く感じる。
ジュリア
...この大会はブロック形式のトーナメントで、ジャンルは統一されていない。
ジュリア
参加してる人数もまるでフェスのような多さだし、参加者のレベルも高かった。
ジュリア
その中でもあたしは何回も勝ち上がってきた...今思えば上出来なくらいに。
ジュリア
...だけど、負けた。 『格』が違いすぎたんだ。
ジュリア
ある相手と当たって、それを思い知った。 ヤツらは別の次元にいる存在なんだって。
ジュリア
その中にいた勝者は、あたしのよく知るヤツ...
ジュリア
その中にいた勝者は、あたしのよく知るヤツ...サイファだった。
ジュリア
「...あたしもここまでか...。」
ジュリア
先生気取りで教えていたヤツが、教え子だったヤツにパフォーマンスで負けた。
ジュリア
「...」
ジュリア
「...あたしには到底プロなんか無理だったんだな...。」
ジュリア
あたしはステージに背中を向け、その場を立ち去ろうとしたその時だった。
黒井社長
?「お嬢さん、せっかく盛り上がってきたところですよ? どこに行くんです?」
ジュリア
...さっき見た夏木社長によく似ている若い男に声をかけられた...確か名前は...。
黒井社長
透「...俺は『夏木透』、親父から君のことは聞いてるぜ。」
ジュリア
...夏木透...確かここのプロデューサーで、社長と会長さんの息子だったはず...。
黒井社長
透「いや~、なんつーかご愁傷さまです♪ なかなか良かったんだけどね~!」
ジュリア
...コイツ、絶対にあたしのこと心配してないだろ...。 聞いた以上に適当なヤツだ。
黒井社長
透「おいおい、どこ行くんだよ? 弟クンの演奏は聴かなくていいのかよ?」
黒井社長
透「...それとも...」
黒井社長
透「...それとも...怖いのか?」
黒井社長
透「...それとも...怖いのか? 才能の差を思い知らされてさ。」
ジュリア
「...別にアンタには関係ないだろ?」
黒井社長
透「おっ、その態度は図星だな? いや~、可愛い可愛い♪」
ジュリア
...コノヤロー...一発言ってやろうと思った時、ソイツはトーンをひとつ下げて言った。
黒井社長
透「...」
黒井社長
透「...俺についてこい。 キミに足りないものを教えてやるからさ。」
ジュリア
そしてソイツはあたしに背を向けて歩きだしていった。
ジュリア
...あたしに足りないもの...もしそれが知れるっていうなら...
黒井社長
透「どうしたの? ...てっきり追ってくるもんだと思ったんだけどな。」
ジュリア
「...」
ジュリア
あたしは会場から出ていく夏木透の後を追った。
ジュリア
他のヤツがパフォーマンスするのを背中越しに聴きながら...答えを聞くために。
(台詞数: 35)