ジュリア
バースデーライブが終わってからあたしはある人へ電話をかけていた。
ジュリア
アイドルになってから一度も連絡を取ってなかったので、出てくれるか不安だ。
ジュリア
プルルル、というコール音の後、繋がった時のノイズ音が耳に入ってきた。
ジュリア
「もしもし、あたし。 ...わかるだろ?」
ジュリア
ああ、という返事とともに久しぶりにその人の声を聞いた。
ジュリア
電話をかけた先はバンド活動をしていた頃に『相棒だったヤツ』
ジュリア
ケータイ越しの声は少し低く、時間の経過とあたし達が大人に近づいているのを感じさせた。
ジュリア
「うん...あたしは元気。 お前はどうなんだ?」
ジュリア
絶好調!といかにも当然だ、という感じで声が返ってきた。
ジュリア
コイツはいつもそうだった...あたしとは違い、悩みごとのない、自分勝手なヤツだった
ジュリア
段取り無視で演奏しているのを、あたしが抑えに回ったこともあったな...
ジュリア
...ふと、今どうしているか少し気になっていた...。 少し聞いてみようか。
ジュリア
「なぁ...お前、今何してるんだ?」
ジュリア
「...あたしは今、アイドルやってるよ。 『ジュリア』って名前でな。」
ジュリア
あたしがそう話を切り出すと、ケータイからゲラゲラと笑い声が聞こえてきた...。
ジュリア
「あぁ!? 『似合わね~!!』じゃねぇよ! あたしだって一生懸命やってんだよ!」
ジュリア
「そもそも、そういうお前だって人のこと言えんのかよ! ええ!?」
ジュリア
そういうと少しトーンを落とした声でヤツは答えた...ロックシンガーになったらしい。
ジュリア
「へぇ...夢が叶ってよかったじゃんか。」
ジュリア
ゴメン、と言ったのはロックシンガーになれなかったあたしに対しての配慮だろう...
ジュリア
「...別に気にしちゃいないさ。 だから謝んなよ。」
ジュリア
「アイドルだって楽しいし、頼れる仲間や応援してくれるファンがいる。」
ジュリア
「...それにアイドルになってから、今まで見えなかった世界が見ることができたんだ。」
ジュリア
「...気付いたんだよ アイドルもロックシンガーも目指すものは一緒なんじゃないか、って。」
ジュリア
なんで?と声が返ってきた。 ...コイツは変なところで突っかかってくるからな。
ジュリア
「...やってることは違うけど、こう...中身は変わらないんだ。」
ジュリア
「アイドルだろうとあたしはあたし、自分の歌でファンに感じさせたいんだ。」
ジュリア
「『あたしの生きざま』ってヤツを...な。」
ジュリア
「だけど...ロックシンガーを諦めたワケじゃないから...勘違いすんなよ?」
ジュリア
少しの沈黙の後、変わったなと言われ、こう返した。
ジュリア
「ある人が...ロックに捕らわれていたあたしに新しい光を与えてくれたんだ。」
ジュリア
「...近いうちにアルバム出すんだ...変わったあたしの生きざまを聴いてくれよ。」
ジュリア
「...大丈夫さ、また会えるさ。 もしかしたら近いうちにセッション出来る可能性もある。」
ジュリア
「それまでには、あたしの代わりくらい見つけておけよ?」
ジュリア
「...『可愛い子を紹介しろ』だって? ...するかよ、バカ。」
ジュリア
「...じゃあな。 また会う時まで、元気でな。」
ジュリア
あたしは電話を切り、空を見た。 ...キレイな星空だ。
ジュリア
この先に...夢や希望が待っていて...アイツもそこに向かっている。
ジュリア
途中で回り道や迷子になるかもしれない...でも、今のあたしならきっと大丈夫だ。
ジュリア
社長にプロデューサーに、ピヨ姉、事務所のみんな...そして
ジュリア
社長にプロデューサーに、ピヨ姉、事務所のみんな...そしてアイツがいるから
ジュリア
あたしはその輝きに手を伸ばし、開いた手を握りしめた。
ジュリア
一度は失いかけた夢と希望を離さないように...
ジュリア
そしてあの輝きになれるように...強く星を掴んだ。
(台詞数: 44)