ジュリア
「じゃあここのところ、もう一度出来るか、サイ?」
ジュリア
0(サイファ)「まかせろ、アネキ! セイャッハー!!」 ギューン!!
ジュリア
「だからそれは6弦!! あたしは1弦を押さえろって言ってんだよ!」
ジュリア
初心者のサイファにギターを教えること3週間、ついにフェス本番が近づいてきていた。
高木社長
店長「ジュリィ、サイファ、調子の方はいかがかな?」
ジュリア
0「ジジイ!オレはもうカンペキ、いつでもOKだぜ!」
ジュリア
「6弦と1弦を勘違いしてたヤツのどこがカンペキなんだよ...なぁ店長。」
高木社長
店長「なかなか見ないミスなんだけどね~、それでも弾けるのはなんでかね?」
高木社長
店長「あと私のことは『マスター』って呼んでくれ! なぜなら私は『桝夕一郎』だから!」
ジュリア
「....わかったよ。ホント、アンタってめんどくさいとこにこだわるよな...」
ジュリア
0「そうそう、ジジイもアネキも細かいとここだわりすぎなんだよ! コードがうんたらとか。」
ジュリア
「お前に関しては気にしなさすぎなんだよ! コード無視して演奏が出来ると思うんじゃねえよ!」
ジュリア
コード...いわゆる『和音』が曲を作るのだけれど、コイツはそれを無視していた。
ジュリア
0「んなこと言ったってよ、3週間しかないのにこんなに覚えられるワケねぇだろ!」
ジュリア
0「それによ...いちおう弾けてるし本番までにはそれほど問題ないだろ?」
ジュリア
「...まぁ、言うほどヒドくはないけど...」
ジュリア
あたしは実は驚いていた。 それはサイファが『3週間とは思えない出来』になってたからだ。
ジュリア
手先が器用なのか要領がいいのか...とにかく同じ頃のあたしよりも上達が早い。
高木社長
マスター「理論も知識も全くない...なのに上達がすごく早いのは...なぜなんだろうか?」
ジュリア
あたしが思いついた答えは二つ、一つは『前に似たような事をしていた』ということ。
ジュリア
これは一番納得が出来る答えなんだけど...それならスコア(譜面)くらいは読めるだろう。
ジュリア
となると残された答えは一つ...あたしが嫌いな結論だ。
ジュリア
「...」
ジュリア
「...センスか...。」
ジュリア
確かにそれなら納得がいく、上達が早いのもそれを身につけるセンスがあるからできること。
ジュリア
だけど、努力なしでは、知識なしではこの先、コイツにとっては厳しくなる時が来る。
ジュリア
だから、あたしはサイに知識を教えるんだ。 そのセンスをムダにしないためにも。
ジュリア
0「おい、アネキ! ここなんて読むんだ?」
ジュリア
「ああ...ってコレさっきのヤツと一緒じゃんか...。」
ジュリア
そしてあたしがコイツにいろいろと構うのにはもう一つワケがある。
ジュリア
...コイツは、サイファはあたしと同じ『左利き』だ。 だから苦労もよくわかる。
ジュリア
それに、左利きのヤツはめったにいなかったから、サイファと組むのがけっこう楽しみだ。
ジュリア
0「よし、それじゃアネキ、1回通してみようぜ!」
ジュリア
「ああ...遅れてくるなよ、サイ?」
高木社長
マスター「じゃあ私は録音しておくから...思う存分やってくれ!」
ジュリア
あたし達は一緒に演奏を始め、お互いの音を奏でていく。
ジュリア
ライブ本番まで、時は一刻と迫ってきていた。
(台詞数: 37)