ジュリア
...夕方になり、客もぞろぞろと入って来ている。
ジュリア
狭い控え室からもわかる店内の忙しさは、あたしが来た時とまるで違った。
ジュリア
「...っ。」
ジュリア
手に少し汗をかいている...これじゃあ演奏に支障が出てしまうな。
ジュリア
...たった3時間くらいだっただろうか...申し訳程度の確認をして、ぶっつけ本番だ。
ジュリア
一応、ストリートでの演奏は前々から少しはやっていた。 でも今回は違う。
ジュリア
合わせる相手がいるということは、自分がやって来たストリートとは異質なもの。
ジュリア
壊れてしまえばそこで終わり、観客は聴く耳すら持たなくなる。
ジュリア
互いに合わせ、客を魅了する…それがバンドの魅力なんだ。
ジュリア
そして、その魅力を店長と作り出す…それがあたしの課題だ。
ジュリア
…
ジュリア
...上等じゃないか。と言い、あたしはほくそ笑んだ。
ジュリア
これは挑戦状だ…店長のオッサンがあたしを試しているんだ。
高木社長
「それでは、今回は特別なゲストをお呼びしてます! カモン!」
ジュリア
店長から声がかかり、あたしは控室から舞台に上がった。
ジュリア
「...っべぇ...。」
ジュリア
店中の客がみんなあたしの方を向いている...こんな光景は初めてだ。
ジュリア
中には、あたしを心配するような…ナメたような話をする人もいた。
ジュリア
…絶対に見返してやる、そう心のなかで思う。
ジュリア
...舞台はシン...と静かになり、あたしの視界は徐々に暗くなっていく。
ジュリア
...1秒...2秒...何分この静けさが続いたんだろう…
ジュリア
まるで一人で闇の中に立ちすくむように...心細く、不安になる
ジュリア
そんな静かな緊張を、アンプから流れるベースの導入が打ち破った。
ジュリア
そしてそれが終わると、一気に店長のピアノが押し寄せて来た!!
ジュリア
…走ってんなオッサン…あたしも負けてられないな!!
ジュリア
あたしはそのドラムに食いついていくように一気に相棒のギターをかき鳴らす!
ジュリア
置いていかれそうになりながらも、必死に食らいついていくうちに、ある感情が湧いてきた
ジュリア
やっべぇ…あたし今、
ジュリア
やっべぇ…あたし今、すっごく燃えている!!
ジュリア
その熱に掻き立てられるように、激しく全力でサビまで一気に駆け抜けた。
ジュリア
───────
ジュリア
はっ、とするとそこには大きな拍手の嵐がおこっていた。
高木社長
「...すごいじゃないか。」
ジュリア
「はぁっ…はぁっ...」
ジュリア
「はぁっ…はぁっ…当たり前だろ?」
ジュリア
あたしは汗だくのまま、マスターに拳をぶつける
ジュリア
その時、また一つ、あの人に近づけた...そんな気がした
(台詞数: 37)