ジュリア
なんとなく、彷徨っていたら見つけたシャッター街。
ジュリア
夜の街灯に誘われるかのように、歩いて、漂って…
ジュリア
腹を空かせた家出娘はアーケードの下に敷かれた道を歩く。
ジュリア
現在進行形で道を逸れてるあたしだけれど、こんなのもたまにはわるくないよな。
ジュリア
グー!!
ジュリア
やば、やっちまった…お腹が鳴いちまったぜ。
ジュリア
恥かしくて、辺りを思わず見渡してみても、静けさがあたしを見ているだけだった。
ジュリア
そんな時、フワッと通り風が運んできた美味しそうな香り。
ジュリア
あたしはその匂いに釣られるがまま、道を進む。
ジュリア
それがあの精肉店との出逢いだった。
ジュリア
精肉店の入り口から漏れている匂いと光。
ジュリア
あの光は、恐らくあたしがこの真暗闇で見つけた一筋の光だったのかもしれない。
ジュリア
あの匂いはあたしの心に、というよりは胃に触れていたが正しい表現だろうな。
ジュリア
お店に入ると、目の前には陳列窓に綺麗に並んだ生肉や、お惣菜。
ジュリア
そして、その精肉店の看板娘と思しき綺麗な女性が笑顔で迎えてくれた。
ジュリア
『いらっしゃいませ』が『おかえりなさい』に聞こえた。
ジュリア
そう勘違いしてしまうほどに、温かかった。
ジュリア
居心地が良かったと表現した方がいいのだろうか。
ジュリア
あたしにはわからない。
ジュリア
ただ、その日の稼ぎで買ったコロッケがおいしかった。
ジュリア
シャッター街を抜けた先の公園で頬張った時、あたしは泣いていた。
ジュリア
夜にまぎれて、誰にも見つからないように…
ジュリア
嗚咽を漏らして泣いてたんだ。
ジュリア
柄にもなく、家族の事を思い出しちまったんだ。
ジュリア
カッコつけて飛び出しといて、これじゃただの弱虫だよな。
ジュリア
みっともないって、わかってる。
ジュリア
でもさ、それほどまでに似ていたんだ。
ジュリア
お袋の味ってやつに…。
ジュリア
あたしはそれからは飽きもせずに毎日通ったんだ。
ジュリア
なけなしの金を握って、そのコロッケを食べる為だけに足を運んだんだぜ?
ジュリア
まったく、呆れちゃうよな?
ジュリア
ただ、安心感があって、そこにいる間だけは家に帰ったような気分に浸れたんだ。
ジュリア
本当は身勝手な事なのはわかっていたけれど…
ジュリア
暫くの間、あそこはあたしの隠れ家になっていたんだ。
ジュリア
けれど、野菜のオマケを貰った日から…ピタリと足を運ぶのは辞めている。
ジュリア
ただ、看板娘の忠言に従って、毎日野菜ジュースを飲んでいるんだぜ?
ジュリア
もう、あそこに行くことはないだろう。
ジュリア
勿論、気まずさもあるけれど、なにより甘えている気がしたんだ。
ジュリア
というか、甘えていた事実に気付いてしまったんだ。
ジュリア
そんな気持ちじゃスーパースターなんかになれはしない。
ジュリア
もっと、自分に厳しく、自分を追い込まなくちゃいけない。
ジュリア
戻る場所をつくってしまったら、そこにずっと居座ってしまう。
ジュリア
その居場所に依存してしまう。
ジュリア
それじゃあ…家を飛び出した意味がないんだ。
ジュリア
それじゃあ…親を見返すことなんてできない。
ジュリア
夢は、夢として寝ている時に見るもの、そう否定された夢を…
ジュリア
叶える事で、あたしは証明したいんだ。
ジュリア
だから、あたしは今日も歌を歌う。ギターを弾く…
ジュリア
「聴いてください」
ジュリア
「スーパースターになったら」
(台詞数: 50)