ジュリア
親と大喧嘩をして家を飛び出したあたし。
ジュリア
もう、暫く家には帰ってないぜ!
ジュリア
というか、帰れないの方が正しい。
ジュリア
あたしから啖呵を切って、大口叩いて飛び出した手前
ジュリア
もう、家(あそこ)にあたしの居場所はない。
ジュリア
前途多望だと勘違いしてた未来ってやつは実は前途多難でさ…
ジュリア
たくっ、お先真っ暗だぜっ…
ジュリア
けどさ、この真暗闇に差し込む一筋の星の光みたいになれる可能性ってやつは死んじゃいない
ジュリア
ほんの僅かに残ってる。
ジュリア
だったらそれを掴み取ってやるだけだぜ!
ジュリア
それでこそスーパースターってやつだよな?
ジュリア
昨日を振り返る暇もない。
ジュリア
明日なんか不透明だ。
ジュリア
それでも、今日をなんとか生きる為
ジュリア
食い繋ぐ為に弦を掻き鳴らす。
ジュリア
一筋の光になる為、あたしは今日も声をあげる。
ジュリア
誰かの心に触れるような歌。
ジュリア
そんな歌を歌いたいぜ。
ジュリア
精一杯素直に歌っているつもりなんだけどな。
ジュリア
でも、唯一それを教えてくれるのは…
ジュリア
皮肉にも、ギターケースに雑作に放り込まれる硬貨だけ。
ジュリア
その日暮らしをする家出少女には十分すぎるほど、貴重な稼ぎなんだけどな…
ジュリア
パチパチパチパチ!
ジュリア
演奏を終えると、今日は珍しく、硬貨の音ではなく、拍手が聞こえてきた。
ジュリア
目の前には小さな観客。
ジュリア
人目もはばからず、その少女は涙を流しながら手を叩いていたんだ。
ジュリア
見覚えのある顔だが、それが誰なのかはわからない。
ジュリア
どこかで見たことがある…
ジュリア
あぁ、そうだ、名前は忘れちまったが、テレビでよく似た子役を見たことあるのか…
ジュリア
少女「お姉ちゃん、歌上手いね」
ジュリア
少女は鼻を啜りながらそう言った。
ジュリア
「あ、ありがとな」
ジュリア
少女「どこかの事務所とかに所属してるの?」
ジュリア
「してないよ」
ジュリア
「それよりどうした、迷子か?」
ジュリア
少女「ま、迷子!?」
ジュリア
少女「迷子なんかじゃないもん!!」
ジュリア
少女は口を尖らせてそう主張すると顔を真っ赤にして何処かへ去ってしまった。
ジュリア
あたしといえば声を掛ける事もなく、その姿をただただ見送ることしかできなかった。
ジュリア
きっと、少女の帰るべき場所に帰ったんだろうな。
ジュリア
それに比べあたしは…
ジュリア
そうだ、どちらかといえば迷子はあたしの方だ。
ジュリア
「せっかくの上客…いや、ファンを逃がしちまったな」
ジュリア
夜空を見上げ、ポツリとあたしはそう呟いた。
ジュリア
吐いた息は白く、空に昇っていく。
ジュリア
空からは白い涙がまばらに降って来る。
ジュリア
今年の冬は例年に比べ長いらしい。
ジュリア
この粉雪はもう桜の雨じゃなきゃおかしな時期だしな、全く、異常気象め…
ジュリア
「寒っ」
ジュリア
春の日は未だに来ない。
(台詞数: 50)