ジュリア
〜〜♫〜〜〜〜♫
ジュリア
気分に任せて弾く弦に、あたしは適当な声を乗せる。
ジュリア
視界の端には、黙々と仕事をこなすプロデューサーの姿。
ジュリア
正直、仕事の邪魔になるかな?と思ったあたしの気遣いは、プロデューサーの
ジュリア
「どうせなら、ノリの良い曲で頼む」というリクエストで杞憂に終わった。
ジュリア
歌の仕事の前に、事務所で息抜きとして歌う。
ジュリア
そんな訳の分からなさが何だか妙におかしくて、自然と声が軽くなる。
ジュリア
ーーちょっと前までは、お前と2人だったよな。
ジュリア
あたしの心を体現してくれる相棒に、ちらりと視線を落とす。
ジュリア
路上でがむしゃらに歌うだけだったあたし達の前に現れた変な男は、
ジュリア
ーーどうせなら、もう少し多くの人に聴いてもらわないか?
ジュリア
……なんて、胡散臭さ全開で話しかけてきたっけ。
ジュリア
……あの日の夜も、こうやって2人で話したっけ。
ジュリア
いつか、大歓声に包まれたステージの上へ。
ジュリア
それを夢見て眠ることは何度もあったけれど、いざ言われてみると実感なんて何も沸かなかった。
ジュリア
ーーなぁ、お前はどうしたい?
ジュリア
当然のことだけれど、相棒は何も言わない。
ジュリア
けど、音は何よりも正直だ。
ジュリア
普段よりも数段力強い音が、真っ暗な部屋の中に響き渡る。
ジュリア
ワクワクしていた。
ジュリア
ワクワクしていた。 ドキドキしていた。
ジュリア
ワクワクしていた。 ドキドキしていた。 それ以上に、不安だった。
ジュリア
何日も考え込む夜を過ごし、気分転換にと路上で歌えば変な男に勧誘を受ける。
ジュリア
ーーだからさ、あの時は正直プロデューサーの勧誘にうんざりしてたんだよ。
ジュリア
というウソを、あたしはずっとつき続けている。
ジュリア
本当は、誰かに背中を押して欲しかっただけ。……我ながら乙女だな、なんて今では笑ってしまう。
ジュリア
でも笑えるってことは、あたしも少しは大人になれたってことなのかもしれない。
ジュリア
ーー何か良いことでもあったのか?
ジュリア
そう声をかけられて、あたしは自分の演奏が止まってしまっていることに気付いた。
ジュリア
目の前には、コーヒを持ったプロデューサー。
ジュリア
しっかり2人分持ってるあたりは、流石というか天然ジゴロというか。
ジュリア
ーーちょっとね。
ジュリア
コーヒーを口に含んで、言葉と一緒に喉の奥に流し込む。
ジュリア
そんなあたしを笑顔で見ているだけのプロデューサーに、少しだけ腹が立った。
ジュリア
なんだ、その「解ってますよ」みたいな大人の顔は。
ジュリア
なんだか無性に照れくさくなって、あたしはコーヒーを一気に飲み干し立ち上がった。
ジュリア
ーー仕事、行ってくるから。
ジュリア
入り時間が早過ぎることなんて百も承知だろうに、背中越しに返ってきた言葉はたった一言。
ジュリア
ーー行ってらっしゃい。
ジュリア
……悔しいけど、あたしはまだまだ子供なんだな。と思い知らされる。
ジュリア
背中に担いだ相棒にも笑われているのか、背中にがなんだかむず痒い。
ジュリア
……ちぇっ。いつか見てろよ。夢みたいなステージを、絶対あんたに見せてやるから。
ジュリア
決意と照れ隠しと、ほんの少しの感謝。
ジュリア
色んな気持ちを言葉に乗せて、あたしは2人目の相棒に振り返った。
ジュリア
ーー行ってくるよ、バカP。
(台詞数: 45)