ジュリア
きったねえ川だよな。橋の上まで硫化水素の臭いが漂ってきやがる
ジュリア
せっかく、こと座流星群が見える夜だってのにな
ジュリア
ま、贅沢言っても仕方ないね。ほら、流れ星。ちゃんと見てたか?
ジュリア
………………
ジュリア
ジュリア、ね。その名前で呼ばれるのも慣れてきたぜ
ジュリア
……知りたいか?
ジュリア
ジュリアってのはな、ジョン・レノンの実の母だよ
ジュリア
早い段階でジョンの音楽を理解し、養母の反対を振り切ってギターを買い与えたんだ
ジュリア
しかも、丈夫さだけが取り柄の安いギターを。当時のジョンに必要なものを分かってたのさ
ジュリア
あたしの名前を聞かれた時、咄嗟にジュリアが出てきたのは、そういう奴になりたかったからかもな
ジュリア
……もちろん、親のつけた名前も大切にしなきゃならねぇ
ジュリア
さらに言えば、ここまで歩んできた人類の歴史、そこに込められた全ての祈りを背負う責任がある
ジュリア
あたしという存在を与えてくれた事への義理ってやつだ
ジュリア
でも、それならあたしが存在する意味はなんだ?
ジュリア
あたし個人が無価値だとして、その無価値さを繋いだら新たな価値が生まれるのか?
ジュリア
あたしという中継地点は必要か?
ジュリア
……あたしはそうじゃないと思う。今までの奴らがそうしてきたように、あたしも掴み取るんだ
ジュリア
中継地点なんかじゃない、ここはスタートなのさ
ジュリア
………………
ジュリア
でもな、この話には続きがある
ジュリア
ジュリアはギターを与えた1年後、交通事故で死んじまうんだ。まるで自ら、命を絶つように
ジュリア
なあ、なんでジュリアは死んだんだ?あたしの目指す先はそんな終わり方なのか?
ジュリア
分かんねーんだよ、あいつがどこで間違えてああなったのか
ジュリア
……すまねえ、取り乱した
ジュリア
死ぬことも苦しむこともまた、生きることの一部だ
ジュリア
生きることに意味があるのなら、死ぬことにも意味があるんだろうな
ジュリア
不謹慎だけど、ジュリアの死によってジョン・レノンのロックは生まれたのかもしれない
ジュリア
あたしの言うことの半分はきっと無意味なものだろうけど、あいつにも届けてやりたいのさ
ジュリア
So I sing a song of love for Julia、ってな
ジュリア
………………
ジュリア
じきに夜が明ける。流星群を拝めるのもあと少しだ
ジュリア
知ってるか?自殺者は明け方に最も多くなる
ジュリア
会社や学校に行きたくないやつも居るだろう。でも多分、それだけじゃない
ジュリア
夜が明けて、幸せそうな奴らが目を覚ます。真っ暗な自分を置き去りにして
ジュリア
昇ってくる日が眩しくて、それと対照的な自分が惨めで、認めたくなくて、つい逃げちまうんだ
ジュリア
なんとなくだけど、分かるんだよ
ジュリア
………………
ジュリア
今日は悪かったな。でも、プロデューサーと話せてよかったよ
ジュリア
さて、落っこちてきた星の欠片でも探しに行くか。あんたも来るかい?
(台詞数: 39)