高木社長
今日も今日とて都会のジャングルをさまよう私。
高木社長
狙う獲物はプロデューサー。50人のアイドルをトップに導く超人だ。
高木社長
なお、送迎企画営業経理事務雑務残業薄給無休、なんでもござれの楽しい職場です。
高木社長
ああ、ちょっとそこの君ぃ!どうして逃げるのかね!?
高木社長
…まったく。猫の手でも借りたいところなのに。うまくいかないものだね。
高木社長
『トラだー!!』
高木社長
はっはっはっ。猫の手も借りたいとは言ったけど、トラとは突拍子もない。
高木社長
『ガオー。』
高木社長
…本当だった!疑って申しわけない!
高木社長
『緊急ニュースです。都内で護送中だった、アムールトラのミミ(メス・8歳)が脱走しました。』
高木社長
状況説明、ありがとう!!
高木社長
『ミミは出産直後で気性が荒く、近寄ると攻撃されるおそれがあるそうです。』
高木社長
何故、そんなのを護送したし。あと、私はすでに近くにいます。
高木社長
ここで終わりなのか。とうとう高木順三朗の出番なのか。
高木社長
しかし、トラと私の間に立ち塞がった者がいた!
高木社長
見た感じは普通の青年だが、トラの前に恐れもなく立ち塞がる時点で、断じて普通ではない。
高木社長
このふてぶてしい邪魔者を片づけようと、トラは片足を挙げて振りかぶる。
高木社長
ちなみに、トラが大型の草食動物を捕食する際には、ネコパンチを喰らわせるのだという。
高木社長
猫だと痛いだけだが、トラのそれは水牛の頭蓋骨を砕くのである。
高木社長
きっとこの青年も、哀れトラの一撃で頸椎を砕かれ…
高木社長
くだ、くだ…砕かれない!?
高木社長
青年は、トラの前足をしっかりと受け止めていた。
高木社長
…いや、これは違う。受け止めているのではない。にぎにぎとして…手を握っている?
高木社長
だが、それに何の意味が…
高木社長
はあああああああ!?
高木社長
なんだ、トラのこの表情は!?子持ちの熟女が、乙女のようではないか!?
高木社長
これは…メスの顔になっている!?
高木社長
そして、今度はその頭を、手で優しく撫で始めた!
高木社長
ああっ!?今までの獰猛な顔が、コタツで丸くなっている猫そのものに!
高木社長
びっくりしたが、これはチャンスだ。このまま、彼がトラを手懐けてくれていれば…。
高木社長
…ちょっと待て!なぜ、背中を押す!?
高木社長
今までふにゃふにゃになっていたトラが立ち上がって、そのまま、そのまま…!
高木社長
…近くに停まっていた護送車の中に、自ら入っていった。
高木社長
……。
高木社長
助かった、のか…。
高木社長
それにしてもあの青年、なんという…。
高木社長
手を握って好感度を上げ、頭を撫でてリラックスさせ、背中を押してやる気を出させたのか。
高木社長
まさに、神の手…。私の人生でも、あんなのは初めて見たぞ。
高木社長
いや、待て…。彼にプロデューサーになってもらったらどうだろう?
高木社長
一癖も二癖もあるアイドルたちをまとめるのには、適任ではないか!
高木社長
おーい!そこの君、待ってくれ!
高木社長
ティンときた!君は、アイドルのプロデュースをやってみるつもりはないかね?
高木社長
おおっ!引き受けてくれるのか、ありがとう!私の名前は高木順二朗!よろしく!
高木社長
そして、私と彼は同志として、がっしりと握手を交わし…
高木社長
うぉほぉおおおおおおお!?
高木社長
…新しい世界が見えました。
(台詞数: 46)