スイングバイ・スイング
BGM
瞳の中のシリウス
脚本家
nmcA
投稿日時
2017-12-21 23:35:13

脚本家コメント
ミリシタのSSR紗代子記念。
紗代子は星が似合うのです。
書いたのに出ない!ほちん!!!

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七尾百合子
「ほわぁ……」
七尾百合子
屋上のドアを抜け、頭上に広がる光景を目にすると、私の口から自然とため息が出た。
高山紗代子
「ね?すごいでしょ!」
七尾百合子
「はい!誘っていただいてありがとうございます!」
高山紗代子
「どういたしまして。百合子も星が好きだって言ってたもんね」
七尾百合子
「ええ、星空ってロマンチックですから」
七尾百合子
私は改めて頭上の星空を眺めた。
七尾百合子
いつもならハッキリ見えるオリオン座のトライスターも周囲の星の瞬きでぼやけて見える。
七尾百合子
それはペテルギウスもシリウスもプロキオンも同じで、いつもと同じ星空だとは到底思えなかった。
高山紗代子
「私ね、小さい頃は土星の輪っかに座ってみたかったんだ。ほら、アレ」
七尾百合子
渡された双眼鏡で紗代子さんの指差す方向を見てみると、ボンヤリと土星の輪が確認できた。
高山紗代子
「アニメで土星の輪っかを滑り台にしていてね。私もやってみたいなぁって」
七尾百合子
「わかります!いつまでもクルクル滑ってて!」
七尾百合子
「……だから、実際には無理だって知った時は、ショックでした」
高山紗代子
私も、と紗代子さんが笑った。
七尾百合子
「いつか、こんな話を土星の輪っかを目の前にして話してみたいなぁ」
高山紗代子
「そうだね。きっと私たちがトップアイドルになるころには土星にだって行けるはずだよ!」
高山紗代子
紗代子さんがキラキラした目で私の顔をのぞきこむ。
七尾百合子
「そう、ですね」
七尾百合子
いつもなら頷く私だったが、今日の私はその視線を受けきれない。
七尾百合子
だって、ここ最近の私は……。
高山紗代子
「……ねぇ、百合子、スイングバイって知ってる?」
七尾百合子
紗代子さんは空を見上げながら私に問いかける。
高山紗代子
「ロケットを遠くに飛ばすためにはたくさんの燃料が必要。でも、積める燃料には限りがある」
高山紗代子
「それを解消する方法なんだけど、どうやるか分かる?」
七尾百合子
私は紗代子さんをじっと見たまま首を横に振る。
高山紗代子
「惑星の重力を使うの」
七尾百合子
紗代子さんが左手に丸を作り、右手の人差し指を丸にゆっくりと近づけた。
高山紗代子
「こうやってロケットが惑星に近づくと、惑星の重力に引っ張られて」
高山紗代子
「でも、惑星は公転しているでしょ?だから、こんな感じで……」
七尾百合子
紗代子さんの右手が左手の丸の後ろを勢いよく飛んでいく。
高山紗代子
「すごいよね、こんな方法があるなんて。だからね」
高山紗代子
紗代子さんが私をまっすぐ見る。
高山紗代子
「百合子だって、大丈夫だよ。何かあってもみんなが助けてくれるから」
七尾百合子
「……気付いてたんですか」
高山紗代子
「気付かないわけないよ。仲間なんだから」
七尾百合子
夜風が紗代子さんの髪をなびかせ、私たちの頬を刺す。
高山紗代子
「そろそろ戻ろうか。このままだと風邪ひいちゃうし」
七尾百合子
「……私はもう少しだけ、見ていきます」
高山紗代子
「……うん。長くならないようにね」
七尾百合子
紗代子さんが戻り、私は宇宙の下でひとりになった。
七尾百合子
ロケットは遠い目的地へと旅立つために、惑星の力を借りる。
七尾百合子
惑星はロケットを引っ張り、そして力強く進むべき道へと進めてくれる……。
七尾百合子
きっと私のこれからもそうなのだろう。一つ一つ目の前の惑星に追いついて、追いついて……。
七尾百合子
暗い空の奥、ひときわ明るい星がきらりと瞬いた。
七尾百合子
身体がブルっと震える。さすがに部屋へ戻ろう。
七尾百合子
屋上の階段を降りて、部屋へ戻る。中では紗代子さんが他のみんなと談笑していた。
七尾百合子
私はその背中をじっと見た。
七尾百合子
きっと、私の手を優しくとって、引っ張って、素敵な未来へと押してくれる大きな背中。
七尾百合子
私はドアを開け、明るい光の中へと歩みを進めた。

(台詞数: 50)