エミリー
……。
エミリー
……あ、仕掛け人さま。こんな所へ何か用ですか?
エミリー
特に目的もなく、ですか。ふふっ、仕掛け人さまはやっぱり少し変わってますね。
エミリー
……私ですか?
エミリー
私も、少し変わり者なのかもしれません。特に目的もなく出てきたわけですから。
エミリー
変わり者同士おそろい、なんて。ふふっ。
エミリー
仕掛け人さま。新たな劇場への移転準備は順調に進んでいるみたいですね。
エミリー
私たち大和撫子も、可能な限り助力させていただきますので、いつでも声をかけてくださいね。
エミリー
……。
エミリー
すみません、仕掛け人さま。さっき、私は嘘をつきました。
エミリー
私は、この屋上から見える景色を見たくて、ここに出てきていたんです。
エミリー
新しい劇場はこことは違って海沿いに作られていますから、今とは違う景色です。
エミリー
新しい景色が見られるというのは嬉しい事ですし、心躍ることです。
エミリー
ですが、こちらの劇場からの眺めが見られなくなってしまうと思ってしまうと…。
エミリー
心がきゅっとして、切なくなってきてしまったんです。
エミリー
仕掛け人さま。私は…。
エミリー
……仕掛け人さま?
エミリー
『その気持ちを大切にすればいい』、ですか?
エミリー
私が、この劇場で培ってきたことを、思い出をここに置いて行くんじゃなくて。
エミリー
新たな劇場へと連れて行ってあげたらいい…。
エミリー
私がこの劇場で経験してきたキラメキは、私だけの宝物だから…。
エミリー
……。
エミリー
……ふふっ。
エミリー
ああっ、い、いえ!違います!今のは仕掛け人さまの言葉を笑ったわけじゃなくて…。
エミリー
恥ずかしながら、私は次の劇場へ舞台を移す際に、全てを一新しないといけないと思っていました。
エミリー
実際に、こちらで使った衣装に小道具、大道具に舞台装置などはその殆どはおいて行くようですし。
エミリー
でも、私がこちらで培ってきた経験や思い出は、置いて行く必要はないのですね。
エミリー
私だけの、私だけが経験してきた宝物は…今の、これからの私を形作り、彩るものですからね。
エミリー
私が、この腕で抱えてきたものはぎゅっと抱きしめて次の舞台へ連れていきます。
エミリー
……そのままぎゅぎゅっと押し固めて、金剛石みたいにしてしまえ、ですか?
エミリー
世界中どこを探しても他に勝るものはないほどの立派な金剛石になるだなんて…ふふっ。
エミリー
今日の仕掛け人さまは、いつもよりも少々気障な舌をお持ちですね。
エミリー
い、いえっ!そんな悪意を持って言ったつもりではありませんから、落ち込まないでください!!
エミリー
…落ち込んだふりですか!?もうっ、仕掛け人さまは悪い人です。
エミリー
……仕掛け人さま。
エミリー
仕掛け人さまがおっしゃってくださった、私だけの金剛石。
エミリー
それは、今はまだとても小さくて歪なものかもしれません。
エミリー
ですが。これから先、ずっと大和撫子であり続ける限り、どんどん精錬された形になると思います。
エミリー
いつか、誰が見ても立派だと言えるほどの金剛石にまで成長したその時。
エミリー
その金剛石が似合う、立派な大和撫子であれるように…。
エミリー
私を、導いていただけますか?
エミリー
Wow!即答ですか?ありとうございます。
エミリー
……。
エミリー
……私の中の金剛石がどこに出しても恥ずかしくない形にまで育った時は。
エミリー
私の左手の薬指にそっとはめてほしい…なんて、はしたなくて言えないですよね。
エミリー
…いえ、何でもありませんよ、仕掛け人さま。
エミリー
…いえ、何でもありませんよ、仕掛け人さま…へくちっ。
エミリー
うう…少し体が冷えてしまいました。
エミリー
風邪をひいてしまう前に中に戻りましょう、仕掛け人さま?
(台詞数: 49)