馬場このみ 29歳 プロデューサー37話
BGM
MORNING_RMX
脚本家
nmcA
投稿日時
2018-01-06 00:42:46

脚本家コメント
第3章「ろーりんぐ〇えっぐ」第8話
【ここまでのお話】
 武道館ライブ後、仮眠をとっていたこのみは5年後の765プロに心だけタイムスリップしていた。自らの身体の変化に戸惑うものの、プロデューサーとして活動することを決意する。
 桃子の「育はプロに向いていない」発言に動揺する育は、これまでの仕事の伸び悩みから引退に踏み切ろうとする。このみはそれを止め、舞台の仕事が来たことを育に伝える。しかしながら役は一つ。そこでこのみが提案したのが桃子との事務所内オーディションだった。
更新が遅くてすみません。
12月は担当誕生日が目白押しで……

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中谷育
「おはようございま……」
周防桃子
「おはよう、育」
中谷育
「……おはよう」
馬場このみ
「育ちゃん、早く席について。説明を始めるわ」
馬場このみ
入り口で立ったままの育ちゃんを、桃子ちゃんの隣の椅子に座らせ私は2人の前に立った。
馬場このみ
「えーと、連絡したとおり、舞台の仕事の打診があったわ。主演よ」
馬場このみ
「先方からの依頼は15歳から18歳の子。現在のスケジュールから考えて……」
中谷育
「そこのあたりは分かってるよ、プロデューサーさん。早く本題に」
馬場このみ
私は頷いてモニターの電源を入れた。
馬場このみ
「桃子ちゃんと育ちゃん、2人には事務所内オーディションに参加してもらいます」
馬場このみ
「オーディション用の台本を渡すから、1時間後、この部屋に来てちょうだい」
周防桃子
「判定はどうやるの」
馬場このみ
「うちのアイドルが判定するわ。まつりちゃん、紗代子ちゃん、そして琴葉ちゃん」
中谷育
「演技が得意な人たちだね」
周防桃子
「志保さんじゃなくて、紗代子さんなんだ」
馬場このみ
「それについては今から説明するわ。まずは……これが台本よ」
馬場このみ
2人に10枚程度のコピー紙を渡す。室内に紙をめくる音が響き始める。
馬場このみ
「今回の舞台の台本を書いた先生の過去作から持ってきたわ」
馬場このみ
「場面は主人公がプリンを消したトリックを見破り、犯人を給湯室で追い詰めるところよ」
周防桃子
「なるほど。犯人役を志保さんがやるわけね」
馬場このみ
私は台本から全く目をそらそうとしない2人に頷く。
馬場このみ
「公平性を期すために志保ちゃんと打ち合わせできるのはオーディションの前だけとします」
馬場このみ
「あとは順番なんだけど……」
周防桃子
「私から行く」
馬場このみ
桃子ちゃんは台本から目を離して私をまっすぐ見た。
周防桃子
「いいでしょ?」
馬場このみ
「いいけど……。後攻のほうが有利よ。審査の直前に演技できるんだし」
周防桃子
「関係ないよ。私が勝つに決まっているんだから」
周防桃子
桃子ちゃんは立ち上がり、入口へと歩いていった
周防桃子
「説明は終わりだよね?じゃあ、私は行くから」
中谷育
「桃子ちゃん!」
周防桃子
育ちゃんの声にドアに手をかける桃子ちゃんの手が止まる。
中谷育
「……今のって、私じゃ桃子ちゃんには勝てないってこと?」
周防桃子
育ちゃんが桃子ちゃんの背中をじっと見つめる。桃子ちゃんは何も答えない。
中谷育
「……私がプロじゃないから?」
周防桃子
「別に。桃子は誰にも負けないってだけだよ」
馬場このみ
そう言うと、育ちゃんに目を向けることなく桃子ちゃんは部屋を出ていった。
馬場このみ
静かだった部屋に静寂が広がる。
中谷育
育ちゃんは桃子ちゃんの出ていったドアをじっと見つめている。
馬場このみ
「さ、育ちゃんも準備をして。時間は待ってくれないわよ」
馬場このみ
育ちゃんの肩を叩き、私はオーディションの準備に取り掛かった。
中谷育
「プロデューサーさん、ありがとう」
馬場このみ
「……?どういたしまして」
中谷育
「こういう機会でもないと桃子ちゃんと真剣に争うことなんてなかったから」
馬場このみ
その言葉に振り向くと育ちゃんと目が合った。
中谷育
「私、勝つよ。だって、私は、プロなんだから」
中谷育
またあとで、と言って育ちゃんも自分の控室へと移動していった。
馬場このみ
育ちゃんの足音が遠ざかるのを聞きながら私は時計に目をやった。長い針がカチリと音を立てる。
馬場このみ
「うまくいきますように」
馬場このみ
私は祈るようにつぶやき、オーディションの準備へと戻った。

(台詞数: 50)