百瀬莉緒
アイドルという仮面を被り、華やかさの裏で標的を始末する。
星井美希
そんな血塗られた彼女達を裏世界の住人はいつしかこう呼ぶようになった。
真壁瑞希
アサシンアイドルと。
百瀬莉緒
夜風に吹かれつつ、莉緒は紫煙を漂わせていた。外に目を向け、人々の往来をじっと見ているのみ。
百瀬莉緒
「遅いじゃない」
星井美希
視線をそのままに、莉緒が声を発すると、部屋には二人の少女が訪れていた。
星井美希
「あれ?ミキたち時間通りに着たよ?ちゃんと間に合ってるって思うな」
真壁瑞希
「予定されていた時刻は21:00。何の遅れもない筈ですが」
百瀬莉緒
確かに二人が言うように、どの時計も時刻は夜の九時を差し、何の不備も無いように見える。
百瀬莉緒
「10秒遅れてんのよアンタら。乙女の10秒が如何に貴重か分かってる?」
真壁瑞希
が、莉緒は厳しくもその10秒を責め上げ、鋭い眼光で二人を容赦なく詰ったのだ。
真壁瑞希
「乙女ですか…」
星井美希
「面白い冗談なの、あはっ☆」
百瀬莉緒
対する二人も相当な含みを見せ、ポツリと呟く。当然彼女が聞き逃すはずもない。
百瀬莉緒
「アンタらみたいなケツの青い子を潰すのもたまには面白いかもね…」
星井美希
「おばさんは早く引退するべきなの。ミキの代わりにお昼寝しててもいいよ?」
星井美希
「永遠に寝ててもいいけど」
真壁瑞希
おもむろに美希の眼光も鋭くなり、表情が変わっていく。裏の顔である、暗殺者の表情へと。
真壁瑞希
そんな一触即発の空気が紫煙の代わりに漂いだす。そこに、じっと見守っていた瑞希が間に入った。
真壁瑞希
比較的好戦的ではない彼女が双方の間を取り持ち、事を丸く収めるのはよくある事だった。
真壁瑞希
「二人ともその辺で。相変わらずなのはよろしいですが、貴方達の仕事は違うでしょう?」
百瀬莉緒
諌められて興が削がれたのか、莉緒はすぐさま普段の調子に戻る。
百瀬莉緒
「はいはい分かってる分かってる。ほんのお遊びよ」
星井美希
「瑞希ってばノリ悪いの」
真壁瑞希
「やれやれ、必ず一回はこうしないと気が済まないんですかね…では今回の件についてですが…」
真壁瑞希
二人のおちゃらけた態度に少しだけ嘆息しつつも、そう切り出してブリーフィングを始める瑞希。
真壁瑞希
「今回のターゲットはどうやらボディガードを雇っているようですね。無駄に警戒心が強い」
星井美希
「ま、ミキの手に掛かれば誰でも簡単にサヨナラなの」
百瀬莉緒
「こっちもやけに慎重ね。今回ぐらいは私まで要らないような気もするけど」
真壁瑞希
「それほどまでに排除しておきたい人物、という事でしょう。それぞれの役目ですが聞きますか?」
星井美希
「必要無いの、どうせミキがサラッとやっちゃうから」
百瀬莉緒
「それじゃ、私はラクさせてもらうわ。万が一に備えて待機って事で」
真壁瑞希
「私は全体の把握、指示ですが莉緒さんはそれでいいのですか?無駄な時間はお嫌いでしょう?」
百瀬莉緒
「ジッと待つ時間も楽しいものよ。相手の逃げた先に待ち伏せるのって、最高の気分なんだから」
星井美希
「あるといいね、それ」
真壁瑞希
「そうですか、では自分達の持ち場へ急ぎましょう」
真壁瑞希
「後は結果を御覧じろ、です…」
(台詞数: 37)