黒井社長
ゴブリン兵「本拠への護送は明日だ。今日はここで大人しくしていろ」
矢吹可奈
《そう言って私を牢屋に入れると、ゴブリンはそそくさとその場を後にする》
矢吹可奈
《あの時、コノミさんに近付いた私は、突然気を失い…》
矢吹可奈
《目を覚ますと、コノミさんに担がれてどこかの街の裏路地を進んでいた》
矢吹可奈
《起きた後は自分で歩かされ、建物の中の長い長い階段を下り、今ここにいる》
矢吹可奈
…ふう…チハヤちゃん達…無事かな…シホちゃんは…
矢吹可奈
《牢屋の壁に寄りかかり、ここで考えても仕方ないのに、チハヤちゃん達の安否を考えてしまう》
七尾百合子
…私以外にここに入れられるとは、彼らにとってよほど重要な虜囚のようですね
矢吹可奈
ふえっ!?
矢吹可奈
《不意に、壁に隔てられた隣の牢屋から声をかけられて情けない声が出る》
七尾百合子
ああ、失礼…しばらくぶりに話し相手が出来たもので…
七尾百合子
なにしろ、ここに囚われてから1ヶ月ほどになりますが、誰かが面会に来るどころか…
七尾百合子
見張りですら近付こうともしないのですから、いささか寂しいと思っていたのです
矢吹可奈
い、いえ…確かにそれならつい話しかけちゃうのもわかります
矢吹可奈
《穏やかだけど、どことなく威厳のある声が言葉を紡ぎ、不思議な安心感が私を包む》
矢吹可奈
《ひとつ気になるのは、声の主が喋る度、ジャラジャラと言う音も聞こえる事…鎖だろうか?》
矢吹可奈
…あの…ここがどこだかわかったり…しませんか?
七尾百合子
ええ、わかりますよ。ここは城塞都市ドラクルブラン…その地下牢です
矢吹可奈
ドラクルブラン…!?と言う事は、シルヴァーナ地方…
七尾百合子
…見ず知らずの方がこの街を知ってくれているとは嬉しいですね
七尾百合子
ふふっ…実はこの街は、私が作ったのですよ♪
矢吹可奈
この街を…作った…?
矢吹可奈
《私は、以前ナオさんに聞いたシルヴァーナの話を思い出し、そしてひとつの結論に到る》
矢吹可奈
じゃ、じゃあ貴女は…ユ…ユーリ・K・ナナンテール様…ですか…!?
七尾百合子
…私の事まで知っているとは…少々こそばゆいですね…ふふっ
七尾百合子
まあ…自分で作った街の牢に繋がれる事になるとは思いませんでしたが…
矢吹可奈
《ユーリさんは、シルヴァーナから連れ出されてどこかに監禁されている》
矢吹可奈
《そう思っていたのに、まさかシルヴァーナに囚われていたなんて完全に予想外だった》
矢吹可奈
《出来る事なら、この事をナオさんに伝えてあげたい…この状況では叶わない願いだけれど…》
矢吹可奈
(あっ、私も名乗らなきゃ失礼だよね…)
矢吹可奈
えっと…私、カナって言います!
七尾百合子
カナ…うん、良い名です…声からも素直さと優しさが伝わるようです
七尾百合子
ふむ…どうやら貴女は、鎖には繋がれていないようですね…失礼ですが、魔法は得意ではないので?
矢吹可奈
あ…はい、あんまり…さっきから気になってたんですけど…もしかしてユーリさんは…鎖に?
七尾百合子
繋がれているなどと言う物ではありません。全身に何重にも魔封じの鎖を巻かれていまして…
七尾百合子
ろくに身動ぎも出来なくて困っているのです…まったく、さながら封印でもされてる気分です
矢吹可奈
(そんな状態でこんなに安定して声を出せるのも凄い気が…)
七尾百合子
(しかし、特別魔法が得意でもないのに、ここに入れられるとなると…)
七尾百合子
(カナさんは、人目に晒したくない虜囚…と言う事でしょうか…)
矢吹可奈
………ぐすっ…
七尾百合子
…カナさん?
矢吹可奈
…あれ?なんでかな…変だな…
矢吹可奈
《ユーリさんの安心する声を聞いていると、ここまで張り詰めていた気持ちが緩んで…》
矢吹可奈
《不安や心配、寂しさが込み上げて来て、涙が溢れて来る》
矢吹可奈
ご、ごめんなさいユーリさん…すぐに…
七尾百合子
…構いません
七尾百合子
感情を押し殺しても、良い事はありません。泣きたい時は泣いて良いのですよ、カナさん…
七尾百合子
(感情を押し殺しても良い事は無い…か…)
矢吹可奈
………………うぅ…会いたい…シホちゃん…チハヤちゃん…会いたいよぉ…うっ…うえぇぇぇ…
七尾百合子
(…しかし、こんな無垢な少女まで牢に放り込み…貴女は何をするつもりなのですか…マコト…)
(台詞数: 50)