黒井社長
ゴブリン兵「マコト様、連れて参りました」
菊地真
ご苦労、君は下がって良いよ。………さて、良く来てくれたね…カナ
矢吹可奈
《ゴブリンに連れられて部屋に入った私に、その女の子は黒い翼を翻して向き合う》
矢吹可奈
…マコト…さん…。マコトさんが今回の事件の…黒幕、なんですか…?
菊地真
ふふ…一度会っただけのボクを覚えているとはね。…質問に答えよう。答えはイエスだ
矢吹可奈
…なんで…なんで戦争なんか起こそうとするんですか!?それに…この部屋…!
矢吹可奈
《視線を上げれば、壁に埋め込むような形の壺と、そこから溢れる光の玉が見える》
矢吹可奈
………生き物の…魂…
菊地真
ははっ…そこまでわかるのか、大したものだ。そう、あれはボクが700年の時をかけて集めた…
菊地真
およそ1000万の魂だ。人間と魔族の間に戦争を起こそうとしたのは、効率良く魂を集める為さ
矢吹可奈
っ!こんな所に閉じ込めてたら、次の命に転生出来ないじゃないですか!
矢吹可奈
なんでそこまでして魂なんか集めてるんですか!?
矢吹可奈
《精一杯の気迫を乗せた私の声にも、マコトさんは余裕の笑みを崩さない》
菊地真
…カナ。魔王の魂(ザミュエールソウル)と言う物を知っているかな?
矢吹可奈
ザミュエール…ソウル…?
菊地真
ふっ…では、魔王くらいは聞いた事があるだろう?
矢吹可奈
《魔王…確か、大昔に実在した、強大な魔力を持った魔族の事…お伽噺にもなっていたはず》
菊地真
さすがに魔王は知っているようだね。そう、その魔王さ
菊地真
1500年ほど前、この大陸には3人の魔王が存在した。その魔力は常識外れも甚だしく…
菊地真
そこに存在しているだけで時間や次元を歪めていたと言う
菊地真
だが、そんな力を持つ魔王達は、いずれもこの世界の自然をこよなく愛していた
菊地真
その為、人間と魔族の間に争いが起きても、不干渉を貫き、終戦後に荒れた自然を再生していた
菊地真
さて…そんな魔王達が何よりも恐れたのが…自分達自身の力だった
菊地真
何しろ、1人でも空間を歪めるほどだ…一歩間違えば、愛する世界その物を消滅させかねない
菊地真
そこで彼らは話し合い、自分達の力を、隔離した次元の狭間に封印する事にした
菊地真
力を合わせて1つの宝珠を作り出すと、その中に自分達の魔力の大半を封じたんだ
菊地真
そして、その宝珠を、この大陸のある地点の裏側…別の次元に封印し、鍵をかけた…
菊地真
この宝珠こそが魔王の魂さ
菊地真
が、ここで彼らはある問題に気付いた
菊地真
それは、自分達の死後、もしもこの力を必要とする災厄が起きた場合の事だ
菊地真
無論、彼らはその気になれば、自分達の寿命などいくらでも操作出来ただろう
菊地真
しかし、あくまで自然の摂理に逆らう事は出来ないと、彼らはその道を選ばなかった
菊地真
さて、将来的に必要になるかもしれない力…かと言って簡単に解放出来ては悪用もされうる
菊地真
そこで彼らは、次元の扉を開く鍵を、これと見込んだ人間達に預け、語り継いでもらう事にした
菊地真
ま、鍵とは言っても、物理的に存在する物ではないんだけどね…ここまで言えば…わかるだろう?
矢吹可奈
………歌………そして…歌守の民…
菊地真
正解。歌守の民は、言いつけを守り、鍵となる歌を子孫へ語り継いで行ったのさ
矢吹可奈
…残念ですけど…私はそんな歌…知りません!
菊地真
ああ、わかってるさ。でもね、魔王達も馬鹿じゃない
菊地真
脆い肉体、短い寿命…人間は世代交代が頻繁に起こる種族だ。歌が語り継がれない恐れもある…
菊地真
だから、万が一の保険として、魔王達は歌守の民に少し細工をしたんだ
菊地真
それは、歌に込めた物と同じ術式を、魔力として魂に溶かし込む事だった
矢吹可奈
…!?そ、それって…
菊地真
ふふふ…そうだよカナ。歌なんて必要無い…君達歌守の民…その魂こそが鍵となるんだ!
菊地真
が、鍵を託された歌守の民は巧妙に正体を隠し、ボクも長年発見出来なかった
菊地真
やむなくボクはしらみ潰し…手当たり次第に魂を集め、ふるいにかける事にしたのさ
菊地真
ところがだ…そうして集めた魂を贄にしてみると…ほんの僅かながら、次元に乱れが生じた
菊地真
意志の力か、はたまた命の力か…?膨大な量の魂は、世界を隔てる次元に影響を与えるらしい…
菊地真
無論、歌守の民1人で済むのに比べれば、その手間は気が遠くなるほどだが、それでもボクは…
菊地真
歌守の民の発見を断念し、その魂の代用品として、魂の収集を始めたのさ
(台詞数: 50)