天海春香
赤坂でのラジオ収録は滞りなく順調に進み、予定通りの時間に終わった。
天海春香
それから、春香、雪歩、貴音の三人を事務所まで送り届けた。
天海春香
いや、寧ろ、事務所まで送り届けてもらったのは俺の方か…
天海春香
「律子さん、相当驚いてましたね」
天海春香
P「まあ…いきなり帰る家がわからないって言い出したら驚くだろう」
天海春香
「そうですよね。まあ、私はそう言いだすんじゃないかな~って思ってましたけど」
天海春香
P「わるかったな、それより春香、家が遠いんだろ?大丈夫なのか?」
天海春香
「はい、今日は千早ちゃんの家に泊めてもらうことになってますから」
天海春香
P「そうか、それならいいんだ」
天海春香
「あっ、あのアパートがプロデューサーさんのお家ですよ」
天海春香
春香は歩みを止め、前方の方角を指をさす。
天海春香
P「あのボロアパートか…」
天海春香
「ああ見えても中はすっごく綺麗でしたよ?」
天海春香
P「それで…あのアパートの…」
天海春香
「1〇〇号室です」
天海春香
P「そうか、なんか色々迷惑かけたな…ここまでで大丈夫だ」
天海春香
P「あとはわかったからな…」
天海春香
P「それじゃ、また明日な」
天海春香
俺は別れの挨拶を一方的に済ませてその場を去ろうとする。
天海春香
「あの…プロデューサーさん!待ってください!!」
天海春香
「あの返事、まだもらえてないですけど…」
天海春香
「これだけは言わせてください」
天海春香
『プロデューサーさんはまだ…私のファンでいてくれていますか?』
天海春香
あの問いに、俺は答えてやることができなかった。
天海春香
本来なら、画面にいくつかの候補が提示されていて、その中から選ぶことができた。
天海春香
でも、ここでは違う。直接、向かい合って、触れ合っている。
天海春香
俺が導き出した結論が、口に出した言葉が答えになってしまう。
天海春香
だから、迷っていた。
天海春香
なんて答えてやるのが正解なのかわからなくて、たとえわかっていたとしても、自信がもてなくて…
天海春香
返事に、詰まってしまったんだ。
天海春香
「でも、いいんです。答えはいずれまた…」
天海春香
「私、待ってますから…」
天海春香
P「春香…教えてくれ…」
天海春香
P「どうして春香は、俺にこんなに優しくしてくれるんだ?」
天海春香
「それは、あなたが私のプロデューサーさんだからです」
天海春香
春香はニッコリと微笑むと、ポケットの中からキャラメルを一つ取り出して…
天海春香
「はい、どうぞ」と言って、俺の手のひらの中にギュっと握らせた。
天海春香
「プロデューサーさん、目が覚めてから、ずっと疲れ切った顔をしてますよ」
天海春香
「だから、甘いものでも食べて、元気出してください!」
天海春香
P「甘いものはたしか…脳にいいんだっけな…」
天海春香
「あの…たぶんですけど…間違っていたらごめんなさい」
天海春香
「たぶんプロデューサーさんは、私達の知らないところで頑張り過ぎちゃったんですよ」
天海春香
「だからそんな表情しているんですよね?」
天海春香
「たとえ仮に、離れ離れになっていた時間があったのだとしても…」
天海春香
「私はプロデューサーさんのアイドルで、あなたは私のプロデューサーさんです」
天海春香
「だから、私は信じてます。昔みたいにプロデューサーさんが笑ってくれるって」
天海春香
「そんな明日を願ってます」
(台詞数: 47)