高山紗代子
む、このお茶は美味しいね。さすがは四条家の……
高山紗代子
君の家はお茶もやっていたっけ。
四条貴音
いいえ。私の家の誰もお茶に拘りの強い人はいません。それはお友達用の私物です。
四条貴音
というか。てぃーばっぐ、ですよ。安物です。
高山紗代子
そうなのかい。知ったかぶらなくて良かったよ。良い器で飲むと美味しく感じる物だね。
四条貴音
10個せっとで二千円のお得商品です。
高山紗代子
だいぶ高いと思うけれど。
四条貴音
それより、話の続きを聞かせてください。結局、その時間旅行はどの様なとりっくで?
高山紗代子
おや、もう解決編かい? 自分で答えを出したいのかと思っていたが。
高山紗代子
まあ、焦らすのも悪趣味だしね。普通に話すとしようか。
高山紗代子
でもタネが分かればなんてことない。結局は百合子君が言った通りさ。
四条貴音
と、申しますと?
高山紗代子
時間旅行なんて言うのはただの狂言、私達を騙す為の手品の一部さ。
高山紗代子
☓☓☓☓☓なんて名前を名乗ったのも、あのトリックを成立させるための舞台でしかなかったのさ。
高山紗代子
そんな大掛かりな事をしないと、私を騙すのは不可能だと思ったのかもね。
四条貴音
ふむ、大変興味深いお話でした。一つ質問を良いですか?
高山紗代子
何でも答えるよ。
四条貴音
その後輩や友人達は、そのあなたの出した答えを……
四条貴音
本当に信じたのですか?
高山紗代子
……さあ。
高山紗代子
二人とも納得はしてくれた様に見えたけれど、君は信じないのかい?
四条貴音
まさか、あなたのお話を疑う筈がありません。
四条貴音
と言いたい所ですが、やはり不自然が過ぎますからね。
高山紗代子
だろうね。嘘が下手なのは私の唯一の欠点だ。
四条貴音
そんな事までしてあなたを騙す意味も、そんな人物の名を騙る意味も、全く見えません。
高山紗代子
参ったな。もしかして君は、私が本当に一世紀も前に行っていたと言うのかい?
高山紗代子
どう考えてもそちらの方が不自然だよ。
四条貴音
うふふ、いい流れになって参りました。こちらをご覧ください。
高山紗代子
……やけに古い冊子だね。……これは!!
四条貴音
☓☓☓☓☓の日記、みたいなものですね。脚色が多いので半分寓話として読んでますが。
高山紗代子
四条貴音、これは何なんだい? なぜ君がこんな物を持っているんだい?
四条貴音
何度も読みすぎて頁を覚えてしまっています。この怜悧な少女探偵の回がとても好きなのです。
四条貴音
彼女達がいなければ、自分は罪人として後世に伝わっていたかもしれない、と。
高山紗代子
だから、それを何故君が……
四条貴音
私がこの方の孫の孫、だからです。
高山紗代子
……!!
四条貴音
ですからさっきはとても驚きましたよ。犯人の仕掛けもあなたの推理も、全部その通りでした。
高山紗代子
ちょっと待ってくれ。君とその人物では苗字が違うが……
四条貴音
ああ、それは☓☓☓☓☓が本名だからですよ。四条は屋号みたいなものです。
四条貴音
ちなみに私も例にもれず、本名は四条でも貴音でもありません。
高山紗代子
……で、その話を信じろと?
四条貴音
お任せします。というか、実際に体験されたあなたが一番良くわかっているはずです。
高山紗代子
……今日は疲れる事が多いな。
四条貴音
私は嬉しい事だらけですよ。舞い踊ってしまいそうです。
高山紗代子
……なるほどね。よし、落ち着いた。
高山紗代子
さて、この事を一言であらわすとしたら……
四条貴音
しんぷるに、『事実は小説より奇なり』でしょうか。
高山紗代子
それも良いけどね。この事は、誰かに喋らないと口が乾いてしまうところだったから。
高山紗代子
なんてことないお茶が美味しく感じたのは、器のおかげだけじゃない。
高山紗代子
持つべきものは友達、さ。
(台詞数: 50)