あの時間を、嘘にしたくないから
BGM
ENERGY_RMX
脚本家
遠江守(えんしゅう)P
投稿日時
2018-03-18 19:38:06

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七尾百合子
どうして…。どうしてなんですか、昴さん!
七尾百合子
ミリオンワールドが消えて、超人的な力も、なくなって…。
七尾百合子
この記憶だって、あとどれくらい残っているかもわからないのに…!
七尾百合子
もう、いいじゃないですか…。私たちは、普通のアイドルになったんですよ?
七尾百合子
アイドルらしく、ステージで歌ったり、踊ったり、テレビに出演したりすればいいじゃないですか!
七尾百合子
それなのに、どうして…。
七尾百合子
どうして、冬の雪山に、わざわざ登りにいこうとするんですか…!?
永吉昴
…どうしてだって?
永吉昴
今まで過ごしてきた時間を、嘘にしたくないからかな。
七尾百合子
えっ…?
永吉昴
普通のアイドルになったら、ミリオンワールドの力で体験したことの記憶は、消えてしまうんだろ?
永吉昴
だったら、今度は自分の力だけで、思い出を作ればいい。
永吉昴
それは正真正銘の、誰にも消すことのできない、オレ自身の記憶だ。
永吉昴
まあ、宇宙とか異世界はムリだとしても、雪山くらいなら、ってな。
七尾百合子
昴さん…。
永吉昴
だから、さ…。
永吉昴
百合子も、マグロ漁船、乗れよ。
七尾百合子
…はい?
永吉昴
百合子にとっても、大切な思い出だろ?マグロ漁船は。
七尾百合子
いやいやいや!むしろ、トラウマなんですけど!?正直、このまま忘れたいです!
永吉昴
大丈夫。百合子には、マグロ漁船に乗る勇気があるって、信じてる。
七尾百合子
ちょっと!そんな信頼は要りませんから、話を聞いて!
永吉昴
ファンのみんなだって、きっと待ってるぜ。マグロ漁船に乗った百合子の姿を。
七尾百合子
私のファンにそんな欲求があるなんて!知りたくなかった!
永吉昴
約束だぜ。オレが雪山の頂上まで登ることができたら、百合子もマグロ漁船に乗るって。
七尾百合子
そんな約束、絶対にしませんからね!
七尾百合子
あっ、ちょっと待って!無視して行かないで…!
七尾百合子
昴さん!?昴さーん!?
七尾百合子
…行っちゃった。
七尾百合子
ああ、どうしよう!?これって、絶対に無事で戻ってきて、マグロ漁船に乗せられる流れだ…!
七尾百合子
早く、早く何とかしないと…。
木下ひなた
…ありゃ?百合子さん、こんなしばれるところで、何をしてるんかね?
七尾百合子
ひなたちゃん…!まるで、物語のようにいいタイミングで!
七尾百合子
実は、昴さんが雪山に登るって。止めようと思ったんだけど、聞かずに出発しちゃって…。
木下ひなた
ふうん。昴さんも、妙なことするもんだねぇ。
木下ひなた
したっけ、あたしが連れて帰って来るよぉ。ここで待っててねぇ。
七尾百合子
ありがとう、ひなたちゃん!
七尾百合子
うわぁ、流石は雪国育ち!雪の中をすいすい歩いていく…!
永吉昴
…何をするんだよ、ひなた!?放せって!
木下ひなた
だめだよぉ、昴さん。雪山というのは、本当におっかないものなんだべ。
永吉昴
でも、オレが雪山に登らなきゃ!百合子が、マグロ漁船に!みんなが待っているのに!
七尾百合子
(やっぱり、私をマグロ漁船に乗せることの方が目的だったんじゃないですか…。)
木下ひなた
その理屈なら、エアホッケーとか漫才とか、商店街で値切ってもらえばとかでいいんでないかい?
永吉昴
…それだ!ひなた、頭いいなぁ!
木下ひなた
これで、昴さんは雪山に上らなくていいし、百合子さんもマグロ漁船に乗れるねぇ。
七尾百合子
……。
七尾百合子
もう…。もう…。
七尾百合子
(その時私の頭の中に閃いたのは、この世界にまだ無いはずの言葉だった。)
七尾百合子
なんなん…!?
七尾百合子
(あっ。でも、これを言う人って、絶対にマグロ漁船に乗せられるタイプの人だ。)

(台詞数: 50)