矢吹可奈
(…あれ…ここ…どこかな…?私どうなったんだっけ…なんだか身体がふわふわする…)
最上静香
それはそうよ、貴女は今、肉体から抜けた魂の状態なんだから
矢吹可奈
!?
矢吹可奈
《その声に驚き、閉じていた目を開くと…薄暗い部屋の中、椅子に座って本を読む女の子がいた》
矢吹可奈
《シホちゃんと同じくらいに見えるその女の子は、本を閉じて膝に置くと、私をじっと見据える》
最上静香
はじめまして…と言うのもおかしいわね。さっき話したばかりだし
矢吹可奈
…!その声…じゃあ、マコトさんと戦ってる時に力を貸してくれたのは…
最上静香
私…闇の巫女よ。マコトを倒し、閉じ込められていた魂達を解放してくれた事、感謝するわカナ
矢吹可奈
《頭を下げる闇の巫女様の話を聞いている内に、だんだんと記憶が蘇って来る》
矢吹可奈
…そっか…私…死んじゃったんだっけ…
最上静香
…ええ、そうね。貴女も他の魂同様、生前の全ての情報を失い、無垢な魂として転生を待つ事になる
矢吹可奈
…うん…仕方無い…仕方無いですよね!そうなっちゃったんだもん!
矢吹可奈
私でも世界の…皆の役に立てたんだもん…それで我慢しないと!
最上静香
………それは、本心?
矢吹可奈
……………
矢吹可奈
《違う…私の…私の本当の想いは…》
最上静香
聞かせて、カナ…貴女の心の声を
矢吹可奈
………たい…
矢吹可奈
《生きたい》
矢吹可奈
………もっと…もっと生きていたい…!もっと色んな所に行って、もっと色んな人に会って…
矢吹可奈
シホちゃんやチハヤちゃんと一緒に生きていたい…!勝ち取った未来を生きたい!
最上静香
………そう………それが貴女の本心なのね
最上静香
…ああ、そうだわ。魂達を解放してくれた事、世界を救ってくれた事へのお礼をしなきゃね
矢吹可奈
え?
最上静香
…私は死と魂を司る闇の巫女…だからこそ、ただ蘇らせるなんて命の摂理を乱す事は出来ない
最上静香
でも、転生と言う形なら、命の宿命たる輪廻転生の摂理を破る事にはならないわ
最上静香
まあ、本来光の巫女の領分である転生を、慣れない私がやるから…
最上静香
たまたま前世の記憶を持ったままだったり、たまたま前世で亡くなった場所に
最上静香
たまたま前世の肉体で転生するかもしれないけどね
矢吹可奈
《闇の巫女様が優しい笑みを浮かべ、私に歩み寄る》
最上静香
…もう1人のあの子…チヅルの娘にもお礼をしないと。カナ、貴女の歌守の民としての魂…
最上静香
その部分の内、半分を借りるわね
矢吹可奈
え…?うきゃうっ!?
矢吹可奈
《そう言って、私の身体に腕を突き入れる。魂だから痛みは無いけど、もやもやする》
最上静香
…うん、あったわ、これね。そしてこれを半分にして…片方は貴女に返して、もう片方は…
矢吹可奈
《青白い光の玉を2つに分け、1つを私の中に戻し、もう1つは屋根を抜けて飛び立って行く》
最上静香
…カナ。マコトが死亡した今、歌守の民を悪用しようとする者はもういないわ
最上静香
だから貴女ももう、歌守の民の使命や宿命に縛られなくて良いのよ
矢吹可奈
《魂の状態の私は何も感じないはずなのに、彼女に抱き締められて不思議な安心感を感じる》
最上静香
…さあ、“転生”の時間よカナ…貴女は貴女として生きて…歌守の民でなく…1人の女の子として
最上静香
…あ、でも………あとで少しだけ…貴女の力を借りるわね…伝えたい事もあるから
矢吹可奈
《私の身体が光りだし、意識がだんだん薄くなってゆく》
矢吹可奈
あ…あの…!色々…ありがとうございました!
最上静香
ええ…さようなら、カナ…次に会うのは、貴女が天寿を全うした時かしらね
最上静香
…さようなら…私の…最後の同胞…
矢吹可奈
…え?それってどう言う…
矢吹可奈
《その質問を終える前に私の意識は真っ白な光に飲まれ、そこで途絶えた…》
(台詞数: 47)